アメリカン・サイコ
アメリカン・サイコ / 感想・レビュー
まふ
別世界的犯罪物語。超エリートでハンサム、リッチな26歳の青年の殺人記。文字通りの「唯物論的世界」の物語と思う。自分と他人とが共通の「生き物」という自覚がないため、人間を(自分以外は)生き物とは思わず、いかなる殺人も「モノ」として眺め「処理」する。だから齧りつき、嚙み切り、切り取ることも、展示物として楽しむこともできるのだろう。モノへの執着はファッション、家具、電化製品などにも表れており、ナルホドと、この青年のココロの一部が読み取れるような気がする。結末が「野放し」なのがコワイ。 G1000 。
2023/08/30
harass
目を通したかった小説。80年代ニューヨーク、投資会社の若き重役の主人公視点で描かれる資本主義社会の行き着く先。大量のブランド名のファッションや商品名が散りばめられ、仲間とディナーや飲みやドラッグばかりの日々と主人公の異常性欲殺人。主人公視点のみで狂気に歪む文体は現実か妄想かと読んでいてあやふやに。残虐を極める描写やカタログスペックのような、電化製品の羅列や、執拗なミュージシャン評などはまさに問題作。なんクリの批評性と異なる、アングロサクソン的な徹底さに辟易としつつ、お勧めしないが、凄い作品だった。
2018/09/19
NAO
延々と並べられるブランド名。稚拙とも思えるようなこういった描写の羅列は、読んでいて苛立たしいほどだが、それはつまり、ベイトマンの精神がそれほどまでにも幼いということの表れでもある。ベイトマンは、「アメリカン・ドリーム」が作り上げた極端な姿だ。あまりにも強い上昇願望が、精神的自立・社会性・倫理観などを伴わなかった場合に生じうる「アメリカン・ドリーム」のモンスターとでもいえるだろうか。このモンスターが憧れあがめているのがドナルド・トランプだということに、今、痛烈な皮肉を感じる。
2019/08/31
藤月はな(灯れ松明の火)
読むのに苦労した本でした。薄っぺらさしか感じないブランド名の列挙、読書や仕事描写の無さに加え、『ファーゴ』のように自分の事しか喋らない人が多く、『荒野のストレンジャー』のように会話が成立していない。一番、愕然としたのは、ビデオ店で「こんなにビデオが多いと何を借りたらいいか分からない」という所。物が溢れているのにパトリックにはその物が欲しいという理由や意志が欠如している。現代人も見られるこの空虚さを再び、アメリカ人は目指しているのか?後に『多重人格探偵サイコ』を出版した角川書店からこの本が出されたことが・・
2016/09/20
ゆのん
主人公はウォール街で働くエリートビジネスマン。富と地位を手にし、働かなくても親のお金で贅沢三昧出来る立場にいる。裏の顔は残酷な殺人鬼。殺害シーンは醜悪で読み進めるのに苦労した。彼を殺人へと駆り立てるのは怒り?愛情への固執?異常なほどブランドに拘る所はまさに病的。殺人を隠そうという面でも杜撰でそんな所にも狂気を感じる。仲間のビジネスマン達もそこに群がる女性達も人として疑問のある言動。消費行動と物欲に彩られた醜悪な部分が大胆に描かれている。問題作と言われるのも頷ける。
2018/11/04
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