短くて恐ろしいフィルの時代
短くて恐ろしいフィルの時代 / 感想・レビュー
青乃108号
どうも調子が悪い。このところ読書が進まない。なのにこの本はあっと言う間に読み終えた。普段俺はこの本のレビューはどう書こう、と考えながら読むんだけどこの本に関しては読むのがあっと言う間過ぎてレビューの考えが無。と言うか本の内容がほぼ無。寓話ととらえればそうとも言えるかも知れないけれど、おそらくそんな事は何も考えられてはいない。面白くなかったかと言うとそうでもなく、かと言って面白かったかと言うとそうでもない。読んだと言って俺には何の影響も残さない本だった。しかし調子が悪いなりに本が一冊読めたのは良しとしようか
2022/01/18
新地学@児童書病発動中
一度に人が一人しか入れない内ホーナー国と、その外側にある外ホーナー国の対立を描く物語。登場人物達は人間と言うより、ガジェット化しており、脳の部分を取り外したりできる。童話的な雰囲気の話が、あっという間にブラックユーモアに満ちた話に変わっていくところが面白い。人間のエゴと政治を巧妙に結びつけた作者の筆力に感心した。読んでいてオーウェルの『動物農場』を思い出すことがあった。あの物語と同じように、政治の本質を的確に風刺していると思う。
2016/11/18
シナモン
「あまりにも小さくて一度に一人しか住めない国、内ホーナー国」と「それを取り囲む大きな国、外ホーナー国」の物語。「十二月の十日」があまりにもちんぷんかんぷんだったので大丈夫かな?とおそるおそる読み始めたけど…なんという面白さ!そして読みやすさ!風刺がきいててグサグサ胸に突き刺さる。私のなかにも「フィル」がいるのか。「目をつぶったままサインしちゃう」自分じゃないのか。独裁者の誕生、戦争の始まりって恐ろしい。不思議でユーモラスで怖い世界を堪能できました。
2023/08/08
星落秋風五丈原
外ホーナー国は何となく、不法滞在者を見ている現代のどこかの国民を彷彿とさせる。フィルの脳みそが動くたびに落っこちる。最初は側にいた人が落ちた脳を拾ってくれますが、途中からその描写がなくなる。頭カラッポのプロパガンディストが、ちゃんと脳がある大衆を引き連れていく。大統領の側近、ビッグニュースに飛びつくマスコミ、褒められてフィルのために何でもしたくなっちゃう国境警備員が彼を独裁者に仕立てる。神の手でさえ摘むことのできない何かが、密かに育っているラスト。そしてそこだけは、どうも、おとぎ話ではない。
2018/08/02
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
大人向けのジェノサイド寓話。翻訳者、岸本佐知子さんが、#反トランプ・ブックフェア として「ほんとに今こそジョージ・ソーンダース『短くて恐ろしいフィルの時代』を多くの人に読んでほしいんですよ」とツイートしておられ、図書館で借りてみた。小国「内ホーナー国」を大国「外ホーナー国」がどのようにして支配し、小国の人々を自分たちとは違う恐ろしい存在として抹殺しようとするのか、権力を握る者、追従する者、無責任なマスコミ。ブラックユーモア満載で笑いながらも、恐い、恐い話だ。
2017/02/09
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