美しの首 (あすかコミックスDX)

Mercy

「美しの首」（86年７月号）「小さ男と姫君」（86年３月号）「雨は降るとも」（87年８月号）「安寿と厨子王」（86年３～４月号）所収。いずれも『ASUKA』。あとがきで「念願の時代物だけの単行本」と語る。「さんせう太夫」「おあむ物語」「猿婿入」といった中世の物語の引用が明示されていて、古典の素養が伺われる。表紙と扉絵の出雲阿国のような立ち絵や、P83の見返りの姿勢は、絵巻物や浮世絵を参照か。おどろおどろしい説話を淡く包む独特の筆致が冴え渡っている。「小さ男～」は、一般的な男女の立場が逆転していて興味深い。

2016/04/21

菊蔵

人間の欲深さ、したたかさ、そして弱さが凝縮されたような珠玉の大人の御伽噺。毒々しいものを秘めつつ、無駄なくスッキリとした、且つ平面ではなく肉感のある絵が中和してくれるようで、読後感には不思議とねばつく重みは感じない。涼やかな目元が美しい近藤さんのイラストに酔いました。私にとっては何度も何度も読み返したくなる大切な一冊。

2012/10/22