エウロパの底から (メディアワークス文庫)
エウロパの底から (メディアワークス文庫) / 感想・レビュー
よっち
作家としての才能に疑問を感じていた主人公が、現状打破のため医師の実験台になり、イメージとして湧いた殺人事件を小説にしたところ、そこから描かれた内容で実際に事件が続いてしまうお話。作者が犯人なのか、模倣犯なのか、はたまた予知能力なのか。作家としてのプライドから葛藤があった主人公も、最後は作家ならではの方法で、守るべきものを守ったというところですか。どういう結末を迎えるのかという緊張感はありましたが、結末は普通でしたね。作家の家に転がり込んできた女の子と、飄々とした女刑事は話のいいアクセントになっていました。
2014/06/27
おかむー
いつも期待して読んではテイストが合わない入間作品、今回は奇抜な個性や倫理観がでしゃばっていないのでテイスト的には許容範囲。しかし、主人公の小説家「私」の書いた小説のとおりに起こる殺人事件の真相やいかに?といったストーリーで、事件との私のつながりにどんな仕掛けやどんでん返しがあるかを期待していたら、仕掛けよりも私の小説家としての在り様のほうに比重が置かれていて、仕掛けは「あれ?どんでん返らずにそのまま?」と肩透かし。他作品との絡みがわかるとまた違った見方もあるようだけど…『もっとがんばりましょう』だなぁ
2014/04/22
チェシャ猫
これは入間さんの本音が何%含まれているの??!!作家としての誇りと現実の葛藤の中でもがく姿が熱いです。こういう作品は本当に上手いなぁと思います。夢枕獏の作品もこんなのがあって好きでしたが、やっぱり入間さんのこういう作品が好きです。
2014/11/01
T.Y.
小説家の私は、怪しい医者の治療がきっかけで、強烈なアイディアを得るようになる。だがそれに基づいて書いた小説の通りの殺人事件が現実に起きる。メタミステリの構図だが、「私」にとって問題なのは自分が殺人犯か否かではなく、これが現実の事件を予知した「模倣」ではないと示すこと――自らが「小説家」である証。多くの点で作者自身を思わせる主人公(しかし細部データには差異あり)の作家として悩む日常から事態は怪事件にシフトし、作中でも小説と現実が重なり、二重に虚実が交錯する。そしてこの作品を書いていたのは誰なのか…
2014/03/26
Yobata
作家として早熟し現在スランプ気味な僕。風邪で通った病院の院長によって才能を取り戻すため電撃治療を受けると小説の一節が目に浮かぶように。それを新作として発表すると、その物語の登場人物の名も同じの事件が発生する。さらに次の作品も実際に起こり予知能力者,さらには犯人扱いされる。私の小説家としての矜恃は…。自分が書く物語が実際に現実に発生するという話は東野圭吾の短編でもあったが、この入間作品は一貫して『小説家』として拘っていた。医者の電撃治療によって眼球に小説の一節が浮かぶようになり才能が蘇ったと心が踊る僕。→
2014/03/25
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