僕の小規模な奇跡 (メディアワークス文庫 い 1-5)
僕の小規模な奇跡 (メディアワークス文庫 い 1-5) / 感想・レビュー
黒瀬
一本のナイフが見てきた数奇な運命の繋がり。これは好きなタイプの群像劇でした。大どんでん返しは無く、あくまでも小規模な奇跡ですが、それが小さな町で起こった日常らしさを美味く表現しています。「お前が○○だったのかよ」と正体が明らかになるシーンも入間先生らしさが出ているなと。また、文庫版だけに後日談が追加されており、単行本も買っていた人へのサービスが熱いです。 『彼の祈った奇跡が、望んだ幸せの側で息づいていますように』
とら
正に小規模な奇跡。群像劇大好きな自分としては堪らない物語だった。群像劇なんてものは、最初がとっかかりにくいなんて当たり前なのである。いきなり何人かの物語が並行して語られていくのだから、ごっちゃになるに決まっている。しかし、そのとっかかりにくさを越えた先にある物語を読みたいから、もっと言えば何人かの物語の重なった”瞬間”を見たいから、群像劇は楽しいのである。その交錯する一瞬が、とてつもなく爽快なのだ。厚さの割には読みやすくてすぐに読めてしまったので、もっとだらだらと読んでいたかった。後日談まで素敵だった。
2016/02/16
岡本
数年前、著者の本を数冊読んだ時に買ったまま厚さ故に積んでいた一冊。読み終えた後にもっと早く読めば良かったと思うのは悪い癖。他作がホラー展開になる事が多いので中盤まで冷や冷やしながら読み進め、第5章の折り返しの場面で残りページ数の多さに不安を感じ、最終章でどんでん返しがあるのかと思ってたら単行本版のおまけだったというオチ。ハッピーエンドで本当に良かったです。あと「彼女」が可愛すぎて辛い。
2016/04/09
Yobata
二十年前、命が尽き掛けていた一人の男は、何かを残す為、長年想い続けた女性に想いを告げる事に。途中、靴屋付近で暴漢に襲われナイフで刺されながらも…。現代、大学生の俺は同学部の彼女に一目惚れして告白する。見事に振られるが、お守り代わりに持っていた拾った錆びたナイフを見て、彼女は条件付きで交際を受け入れる…。俺の妹の私は高校を辞め引きこもり、今はやっと外に出て靴屋でバイト中。そこに来店する美少年の命名ハンサム丸は靴をモチーフにして絵を描いているらしい。万年努力賞止まりでリタイアした身にとっては重い話だが、→
2012/07/16
T.Y.
本編はだいぶ前に読んだけれど、文庫版書下ろしエピソードは放置していた気がするのでこの機に読んで登録。病気で余命幾許もなくなった「僕」は最後に以前から好きだった人(人妻)に告白しに行くが、その途上で通り魔に遭遇する。彼が通り魔に刺されて投げ捨てたナイフと、事件のあった靴屋を廻って、20年後の世代の青春が始まる。ささやかで、そして屈折しているけれど、それゆえにこそ「何て幸福なんだろう」と思える一篇。
2013/01/25
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