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刺繍する少女 (KADOKAWA新文芸)

刺繍する少女 (KADOKAWA新文芸)

刺繍する少女 (KADOKAWA新文芸)

作家
小川洋子
出版社
KADOKAWA
発売日
1996-03-01
ISBN
9784048729437
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刺繍する少女 (KADOKAWA新文芸) / 感想・レビュー

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emi

よく研がれた刃物は、すぐに切れたことに気づかない。ゆっくりと血が滲んで、後から痛み。十の短編から滲み出てくるのは、刹那の狂気とでもいうのか、ほんの少しのさじ加減でいつだって大事(おおごと)にできるその手前、といった空気だった。不穏で、その不穏に意識を絡め取られる。身動きできないのではなく、このまま狂わされたくなる不可思議さ。小川洋子さんはなんというか、そういう妖しい魅力を放つ作品がとても独特で癖になる。こんな場所に来たいと望んだわけでもないのに、見せられた世界に圧倒されて帰る気が失せていく。それが怖い。

2016/11/04

ゴリ

死を待つ時間には生の時間が間違いなく流れている。その流れの中に過去の思い出の少女が現れ、読者を現実と想像の世界に引きこんでしまう。果たして戻ってこられるのだろうか、それとも想像の世界に引き込まれたことも理解していいないのではないか。ラスト鮮やかな刺繍の髪飾りの映像が浮かんで、僕はやっと現実の世界に戻ってこられたんだと気づいた。

2010/10/24

小川洋子さんの、繊細で静謐で、現実と幻想の間を行ったり来たりしている文体が好きだ。この本はどちらかというと現実に近い短編集であると思う。短編集の中の「図鑑」の最後だけは、現実と幻想の境でたゆたうことができるけれど、それ以外は現実的だと感じた。満足のいく読書だったけれど、きっと再読はしないだろう。小川洋子さんの作品の中では評価は低めになってしまった。もっと素敵な文章を書く人だと期待してしまっているから。★★★★☆

2022/04/08

ライナス

短編集。今回も静謐で不思議な世界を案内された。読後、暫く置いて感想を書く事が多いが、数日経っても尚、作中のモチ−フが余韻を残している。「森の奥で〜」のぜんまい腺が気になり、「美少女コンテスト」の星空のしずくを食べたくなり、「アリア」の水牛の置物を撫でたくなる。刺繍が施された可愛らしい表紙をぱたん、と閉じた時、「またおいで下さい。」と言われた様な感覚に囚われた。

2012/09/16

エムパンダ

10篇収録。「森の奥で燃えるもの」は幻想的。耳から取り出すぜんまい腺が不思議で気持ち悪くて、森の収容所に入って出られない気分になる。「ケーキのかけら」「アリア」「ハウス・クリーニングの世界」は浮世離れしたミステリアスな女性と主人公の静かな関わりが静かで厳かで不穏にさせる。暗くならずに読みやすい物語ばかりでした。

2021/10/11

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