岡山女
岡山女 / 感想・レビュー
リッツ
ひたひたと岡山弁の語りが恐怖を連れてくる。囲われていた旦那に心中の道連れにされかけた女、切りつけられて失った片目の代わりに「霊感」を得た。それを新しい生業にと張り切る両親と始めた商売。そのもとへ相談に訪れる人々が語るのは、羨望、嫉妬、恋情…その果ての惨劇が少しずつ見えてくる様は禍々しくも魅惑的で次々と聞きたくなる。最後の話は人の怖さが彼女にも襲いかかり、その黒々しさは、まさに「ぼっけえきょうてえ」
2020/08/29
ゆっき~
なんだろう…非常にタミエに好感を持つ。自分の生き方をわきまえている女、いつも困ったように静かに微笑んでいる美しい異形の女。家族の距離も乾いて醒めていてちょっと身勝手な部分があるのがかえってリアリティがあるように感じた。文明開化によって変わりつつある岡山の街と当時の人々の姿が目に浮かぶよう。『ぼっけえ、きょうてえ』に感じたような湿度も堆肥の臭いもない。むしろ乾いているくらいなのに、不意に腐臭や狂気のような厭なにおいを嗅いでしまい、時おりタミエ同様にドキッと冷や汗をかいてしまった。
2014/03/02
Maki Uechi
★★★☆☆ あぁ。匂い立つような。岩井志麻子だなぁ。この世界観好きです。
2017/04/29
ロビー
明治後期に妾から霊媒師に身を落とした主人公の物語。近代化する日本のキラキラとした俗な希望と、人の業の深さによる絶望とが入り混じって大変興味深い。今では過去の遺産とも言える陸蒸気(蒸気機関車)や食堂車、勧商場(デパート)、珈琲などが金持ちの、最新の物として憧れと妬みの象徴として描かれていたのが印象的でした。読書会で知人に勧められて読みましたが、面白かったです。
2012/07/24
あかつや
妾商売で両親ともども暮らしていたらとち狂った旦那さんに日本刀で殺されかけて、命は助かったものの左目を失明、こんな様では妾もやれないと思っていたらなぜか失くした左目にこの世ならぬものが見えるようになり、なら霊媒師で食ってこうという、岡山女はしぶといな。要は霊感探偵的な話で、6話収録。そんな経緯でなった霊媒なので、力はあっても自信はなくて、積極的に解決に導くってわけではなく、自分も怖い目に会いながらなんとなく解決へ向かうというパターン。でも商売はうまくいってるようだから、簡単なやつはうまく転がしてんだろな。
2020/04/26
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