妖櫻忌
妖櫻忌 / 感想・レビュー
みも
本作はホラーであろうか。一面的にはそれは正しい。だがその本質は、ホラーの装いを纏った様式美の幽玄な文芸作品である。とは言え、その霊的な場面の鬼気迫る描写は圧倒的で、息をつめ一筋の光も射さない暗渠に沈み込んでゆくような恐怖に捕らわれる。全編を通しての要諦と言えるのは「女の情念」と「芸術家の執念」であろうか。子弟関係ながら密やかに抱く確執。「花を摘まれた」と表現される怨念と、葛藤の果ての自己崩壊。格調高い流麗な筆致で、人間の業の深淵を描き切る。僕は心を奪われたが、心霊描写が苦手な方にはお薦め出来ないのが残念。
2020/03/29
名駿司
★★★☆☆ この作家のタイトルはどれも秀逸。それだけに期待度が上がってしまう。今作は編集担当者が主人公。死んだ女流文学者・鳳月とその助手・律子の作品と確執を追う。作中作の文体は美しい。それが誰の文ににせよ律子に書かせ続ける狂的な心理がこの主人公にあれば。あるいは冷めた視点で眺めるか。いずれかならもっと違っていただろう。作家の執念と女の情念が描かれているが、序盤の律子のゴーストライター的発言は何だったのだろう。それが真実なら作品自体が破綻してしまうのだが。
2020/08/15
kaizen@名古屋de朝活読書会
怖い。恐い。こわい。 作家が弟子に乗り移り、作品を書かせているのではないかという妄想。 文学の世界の弟子というものが、本当に存在するかどうかを知らない。師匠亡き後、弟子の力の示し具合が勝負なのだろう。 恐い話を読みたい人にお勧め。 著者も作家なので、出版の裏事情には詳しいはず。
2013/04/09
キムチ
嫌な意味での「女流作家」の世界を描いている。興味半分で一気読みしたが、けだるさが残ってしまった。 篠田ファンになって行った理由が宗教、倫理面の底辺をざわっとなでる様なホラーの感覚だっただけに、これは醜悪。 ただただ吉屋信子、円地文子、大町桂月等を思い出しながら読みとおした。 キャッチコピーの愛執の念を感じたい向きには合うだろうが・・
ぬのさと@灯れ松明の火
主人公の編集者の言動が何とも感じ悪くて、ちょっとなあ。
2012/03/02
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