愛蔵版 冷静と情熱のあいだ (文芸シリーズ)
愛蔵版 冷静と情熱のあいだ (文芸シリーズ) / 感想・レビュー
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ふたりの間には、一枚の鏡がある。その鏡がふたりを隔てる。過去に引き戻し、未来に行くことを拒否しつづけることで、生きながらえている。あおいと順正は、互いを思い合っているのに会うこともかなわない。学生時代に激しく愛し合ったふたりは、ある事件をきっかけに離れ離れになってしまう。別れてからは音信不通となり、互いの動向も知らないまま、新たな生活をはじめてはいる。どこにも行けず、何にもなれず、明るい未来の展望をすべて打ち消してまで、過去の記憶に縛られている。あおいと順正に、輝かしい未来が訪れる日は来るのだろうか…。
2015/05/19
とくけんちょ
冷静と情熱のあいだ、なんて心を打つタイトルか。こんなドラマティックな恋は実際にはしたくないけど、小説では読みたい。そんなワガママを叶えてくれる。対になる物語を交互に読み進める。対になる言葉を見つけた時に、順正とあおいの二人の人間性を感じる。あー、出来ることならば、一生のうち一度でも、冷静と情熱のあいだに身を置いてみたい。いつも恋愛ものを読んだ時は、本命ではなく、主人公を成長させたパートナーのことを想う。そここそ、物語の一番の魅力となり得る。
2019/12/21
美海
とてもよかった。最初の方は文体になかなか馴染めず平坦でつまらないと思って読み進めていましたが後半になるにつれて順正とあおいの辛い過去をたどりながらも相手を一途に思い続ける日々を描かれており大人な恋模様を羨ましくまた切ない気持ちになりました。マーヴの完璧な人格でさえも深い愛情にはかなわない、そのなんとも言えない切なさに胸が苦しくなりました。
2016/01/11
iku lele
江國香織さんのRossoも辻仁成さんのBluも繰り返し読んだ大好きな作品。特にRossoで、本を買わない理由を「読みたいだけで、持ちたいわけじゃないもの。」と答えたあおいに、私が完全に図書館派になった程大きな影響を受けました。初読ではどちらから読むか悩みましたが、Rosso→Bluが正解と勝手に確信。昔はあおいと順正の恋に憧れましたが、いざ私自身が運命の30才に迫ると、マーヴとの生活を手放したあおいに溜息が。愛蔵版はふたりを同時進行で追えるので新鮮な感覚。Rosso冒頭の4行を筆頭に永遠に好きな作品です。
2011/01/13
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高校のときからずっと好きだけど、やはり好きだ。江國さんの感覚的な文章がすーっと入ってくる。こういう文章を書く人はなかなかいない。すごく細かな説明がなくたって、そこにいるように感じることができる。今までは順正とあおいのラブストーリーに目が行っていたが、今回気になったのは芽実だった。「いいの?いいの?知らない男の人と付き合ってしまっても」別れの場面が痛々しすぎて、この本は何度も再読しているけど、順正が酷い男だと思ったのは初めてだった。男の人は時に正直すぎる。決心すると曲げない。そこが辛くてでも好きなんだよな。
2010/10/20
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