キップをなくして
キップをなくして / 感想・レビュー
ヴェネツィア
中学生くらいを読者対象に想定して書かれたと思われるファンタジー小説。最後のところは、さすがにジンとくるが、全体としては随所に甘さが散見される。タイトル通り、キップを失くした子供たちが東京駅で共同生活を送るというお話なのだが。死をいかに受けとめるかをめぐるビルドゥングス・ロマンを、鉄道と旅と北海道で色彩豊かに描いてはいるのだが。池澤夏樹の小説にしては、突き詰め方が不十分なようだ。読者対象を意識しすぎた結果かと思われるが、もっと難解でもよかったのではないか。残念ながら着想を生かしきれないものになったようだ。
2015/05/07
ぶんこ
子供が主人公のファンタジーで、こういった作品を池澤さんが書かれたとは嬉しい驚きです。「キップをなくしたら駅から出られない」と小さい子に教えるのは罪だなぁ。怖いなぁと思っていると、連れてこられた所は子どもだけで暮らす東京駅構内のとある場所。駅の子となって、駅構内やホームで危険から子どもを守る仕事につく事に。突然我が子が帰らなくなった親たちは何を思うのか。色々きになりつつも、イタルの繊細な優しさに物語に引き込まれていました。ミンちゃんのおばあさんの話す「人の心は、小さな心の集まりからできている」に感動。
2016/10/10
白のヒメ
池澤夏樹というと、どうも「全集の人」という幼稚な敬遠感があって手を出せずにいたのだけれど、薄いしファンタジーチックだしということで手に取った本。切符を失くした子供たちが東京駅で集団生活をしているという発想が面白く、電車や路線の蘊蓄も単純な物語を飽きさせない効力があった。内容は子供向けという感じだけれど、池澤作品のとっかかりとして。私の肩の力が抜けたので良しとします。さて、お気に入りさんの感想を拝読して次に読む作品を決めよう。
2015/08/30
Rin
【図書館】読友さんに教えてもらった一冊。とても読みやすく、柔らかい空気に包まれている。駅でキップをなくした子どもたち。駅からは出られずに駅で暮らすステーションキッズとなって、駅内で働くことに。駅で暮らしながらも自分たちでしっかりとルールを決めているし、よほどの事がない限りは大人は助けてくれない。そうして自然と大切な沢山のことを学んで、考えて。お互いにできることを探していく。駅で暮らすうえでは困ることはないように整えられている。ファンタジー要素もあるけれど、駅の子になって成長したみんなが眩しい一冊でした。
2015/12/31
ゆきちん
初読みさん。切符で電車に乗っていた小さい頃、あっちのポッケに入れたりこっちのカバンに入れたり、結局手にしっかり握りしめて『絶対に失くさないように』したなぁ。この本は、キップを失くしてしまった子供たちが、改札を出られなくなって東京駅で集団生活し、お仕事するファンタジー。なんだけど途中から命の大切さの話に展開していきます。児童書?にしても良さそう。鉄道ファンにはたまらない生活に違いない。
2017/10/01
感想・レビューをもっと見る