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裁縫師

裁縫師

裁縫師

作家
小池昌代
出版社
角川書店
発売日
2007-06-01
ISBN
9784048737753
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裁縫師 / 感想・レビュー

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❁かな❁

お気に入りさん達の感想から手に取りました!小池昌代さん初読み。なんだかとても雰囲気のある素敵な作品でした*ひっそりと静かに淡々と語られるエロティシズムあふれる短編集。とても美しく不思議なお話が色々ありました。いけないことを知ってしまったような感覚でドキドキしてしまいます(笑)装丁も作品の雰囲気によく合ってます!表題作の『裁縫師』が特に印象に残りました*皆さんが小川洋子さんみたいと言われるのよくわかります。密やかに繊細に官能的でじわじわくる描かれ方で小川洋子さんを彷彿させます。とても素敵な読書タイムでした♪

2015/12/25

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

熱くさせるのは、その指先。美しい衣服を織るその指が、快楽をも織り上げることを想像して、下腹部が重い。 空を飛ぶことと左腕の代償は等しく快楽を産んで。征服される女はかなしくも幸福。服従があまく蕩けさせてからだは熟す。何処でもない静けさの揺蕩う動物園は、しっとりとこころまで濡らすから。 奪われることを、被害者とだれが名付けるのだろう。その甘さを味わえるならば、率先して被害者になりたい。あまく、奪われた、いばらの、野ばらの、孤独の。わたしは世界の片隅で密やかに湯を沸かす。「きょうも、鋼鉄のように自由だ」

2019/09/21

jam

裁縫師が誘ったのではない。9歳の少女が、裁縫師を誘ったのだ。裁縫師が教えたのではない。少女は最初から知っていた。裁縫師のアトリエで、端正な指が少女の身体を採寸する。少女の衣装を誂えるために。その僅かな時間に、女が開く。9歳の頃の自分を思った。自然の中で子供であることを享受しながら、子供であることの無垢を武器に、私も早熟な少女だった。伯母が誂えてくれた深緑のビロードのドレスは、ぬめるような光沢が美しかった。そのドレスは従兄の結婚式に袖を通した。裁縫師が少女に誂えた衣装も、やがて小さくなる。遠い日の記憶。

2017/10/18

藤月はな(灯れ松明の火)

読友さんの感想に惹かれて読むと何とも不思議で淫靡な 世界が拓けていました。映画『ファントム・スレッド』でも思ったが、採寸という行為は確かにどこか官能性を帯びている。それは自分の殻を他者がなぞる事で自分の内に秘めたものを徐々に暴かれるようなものだからかもしれない。あの時、「女」として華開いた彼女は大人になってから誰よりも人を蠱惑しただろう。「女神」は彼女に若さを吸い取られながらも情を交わし、殉じた男達は誰よりも幸せだと思う。「左腕」は川端康成の「片腕」を彷彿とさせるもののそれ以上に空を飛ぶ描写の淫靡さに陶然

2018/07/21

chimako

小川洋子さんの濃い短編を読んだ時と似た感覚。とろりと官能的であったり、めりめりと残酷であったり。子どもの欲情や肉親対する欲情は禁忌だが甘味を孕む。好むと好まざるとに関わらず、日が暮れた事に気づかぬ子どものようにそこに取り残される。淡々と描かれる日常に「何かが起こる」危うさを感じとり不穏な空気を吸いながら読み進めると、そこにはあり得そうな非日常が存在する。懐古もおとぎ話も喪失も有る。読み終えた後、もう一度ページをめくる。何があったのか、確認するために。どうも置いてきぼりをくったようだ。

2021/03/14

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