世界の終わりの終わり
世界の終わりの終わり / 感想・レビュー
いっち
小説家の夢を叶えた主人公。だが本は売れず、出版社からの依頼がなくなった。小説家としての再起をかけ、バイトしながら小説を書く生活から脱出し、東京へ行く。淡々と働く作業員を見て、主人公は「お前たちは愚民なのだ、まじめに働いていても愚民なのだ」と言う。真面目に作業員したとしても、夢を一度叶えた人からすれば、愚民なのだろう。「やりたいことをやって失敗するのは勝者だ。本当の敗者は、やりたいことすらわからないまま死に行く」。本当の敗者は、やりたいことをしないまま後悔して死ぬ人間だろう。わからないままでは敗者ではない。
2022/10/18
ちょん
小説家の夢を断たれた「僕」は、復讐の物語を紡ぐため東京へ向かう。夢をあきらめさせられた若者の心の中を描こうとするとこんな世界になるのか。狂気の世界、妄想の登場人物、死への憧れ。青年の青臭い葛藤に翻弄された。佐藤友哉の世界に引き込まれた。
2014/01/29
ゼロ
佐藤 友哉の魂の叫びが聞こえた一冊。夢を叶えた若者が簡単にハッピーエンドに辿り付く事ができない。理想と現実の狭間で精神と身体がぶっ壊される。それでも。それでも好きな小説を書いていたい。夢を叶え続けいたい。そんな悲痛の叫びが聞こえてくる作品でした。
2010/12/22
とら
夢を叶えるために奮闘し、叶えるところまでもっていく作品は多々あれど、夢を叶えた後、挫折して、もう一度立て直す過程を描く物語は珍しいのではないか。というか自分は見たことがない。夢を叶えても、思い描いていたような場所じゃなかったな、という状況に陥っている人は、意外と多い気がする。でも、一回夢を叶えたという経験は無駄にはなっていない。だから大体は次の場所にもスムーズに進める筈だが、その夢に拘ってこれまで生きてきたんだ…というプライドから、夢を捨て切れない主人公みたいな人物も沢山いる。本作はその人らへのエールだ。
2019/03/04
ミツ
久々の佐藤友哉。まさにザ・青春小説。この青臭くほとばしる激情がたまらない。作家になるという夢が叶って、そして終わってしまった一人の男の痛々しくも滑稽な闘争と快復の物語。青春小説の多分に漏れず本作の主人公もまた怒り、怨み、苦悩したりするのだが、不思議とじめっとした暗さはなく、むしろケラケラとした空虚な明るさが感じられ、かる~く楽しんで読める。主人公のおちゃらけたクズっぷりに笑い、脳内妹のかわいらしい罵倒にぞくぞくし、舞然姜華夢璃告里子の優しさに癒される。そして至極真っ当に訪れるラストの清々しさ。良作。
2014/01/05
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