おそろし 三島屋変調百物語事始
おそろし 三島屋変調百物語事始 / 感想・レビュー
kaizen@名古屋de朝活読書会
江戸物・世話物・心温怪談。恐いので5話の間に休憩を入れながら読んだ。袋物屋の三島屋の黒白の間。囲碁をするための部屋だった。長兄の娘、おちかが、訪れた人から話を聞く。「百物語事始」と副題にあるように、最初の5話分が入っている。そのうちの一つはおちか自身の物語。5つの話がめぐりめぐって、最初の段落が終わる。一つづつの話は「おそろし」いので書けない。「家の光」2006年1月号から2008年7月号の連載。単行本化にあたり、加筆訂正とのこと。比べてみるのも一興。書いとかないと雑誌のある図書館に行った時に忘れるため。
2013/05/27
文庫フリーク@灯れ松明の火
【貌言は華なり。至言は実なり。苦言は薬なり。甘言は疾(やまい)なり。宮部は慈愛なり】すれ違う心と心が招いた惨劇。自責の念に心を閉ざすおちか。伯父で主人の代役としてもてなした相手は、碁好きの伯父が黒白の間と名付けた部屋から見た、庭の曼珠沙華の花に蒼白となる。おちかに何か通じる物を感じた客人が、生涯胸に秘めてきた出来事と想いを語ったことをきっかけに、伯父の荒療治・おちか一人を聞き役に、五日に一人の割合で、不思議で妖しい話をするお客を募る変形百物語。善も悪も、清濁併せ持つのが人間。客人の語る物語は、時に懺悔→
2013/07/10
takaC
なんとなくそうだろうと思っていたら、案の定シリーズ物なのですね。面白いのだけど(本が)厚いですね。次のはどの本だ?
2014/10/06
kishikan
先に感動のあんじゅうを読んでしまったので、おそろしは興ざめになるのではと心配しましたが、いやどうしてどうして。おちかが叔父の営む三島屋に預けられた理由や黒白の間で人の語りを聞くことになった経緯などは、2作目を読んでしまったのでもたつき感がありました。でも話が進み、おちかを始めとする登場人物や語りにまつわる怨念の連関性が深まり、最終話の「家鳴り」に至っては誰もが圧倒されるでしょう!亡者、異界、恨み、妬み、それにタイトルからは怖さが目立つホラーのようですが、読後は切なさと哀愁の混じった静かな想いに包まれます。
2012/04/24
kariya
禍事がある。言葉に尽くせぬ、映した目が光を失うような。我が身に降り掛かったそれから逃れるように生家を離れたおちかは、身を寄せた叔父の営む三島屋で、客の持ち寄る不思議話を聞き取るようになる。曼珠沙華に浮かぶ妄念、人を呼ぶ蔵、語られる事どもは人外の術でありながら、呼び込んだのは憎悪、屈託、欲望、全てが心を元とする。情愛でさえ過ぎれば魔を産み育てる洞となる。けれど生粋の物語巧者の手は一つ一つの話を引き寄せ手繰り、終いに別の形の理を示す。魔を放つ、げにおそろしきは人の心、だが救い得るのもまた、人の心なのだと。
2009/08/31
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