あなたの獣
あなたの獣 / 感想・レビュー
だまだまこ
井上荒野さん初読み。たまたま図書館で手に取った本。不眠症で眠れぬ夜に、臨月の妻のまあるいお腹をみて、砂丘を思う…そんな描写から始まる連作短編集。捕まえようとすると逃げてしまう、あっさり去ると執拗に追いかけてくる、そんな掴み所のない櫻田という男の人生の断片。彼のことは正直理解できないし、共に歩んでは行けない、好きになりたくないタイプの人だと思う反面、そういう謎めいた雰囲気に惹かれるのもわからなくはないかなぁ…と。ストーリーより、文章の雰囲気が好みで、他の作品も読んでみたいと思った。
2018/11/14
chiru
どうして、共感から程遠い主人公にしたんだろう。つかみどころのない謎の櫻田には欠けてるものがたくさんある。信念や責任感だけじゃなく愛情も。なのに櫻田の生き方は『何も強く求めない』という決まりによって成り立ってるようにも見える。でもこのお話から得るものがなかったです。★1
2017/12/26
ぷく
蜃気楼のように曖昧な櫻田、反対にその輪郭が切り絵細工のようにくっきりとしている女たち。くっきりしているのに、櫻田を存在させるためだけに、存在したかのような女たち。 誰でも心に獣を飼っている。普段はそんなことに気づくこともなく、ましてや飼いならしているなどという認識もないのに、一旦檻が壊れると、その獣は手に負えなくなるほどの狂暴さでぶつかってくる。一見いい加減でつかみどころのない櫻田が櫻田たる所以は、彼が飼っている獣によるもので、私にとって彼は最高に魅力的な人物だった。
2020/10/24
スパイク
これぞ井上荒野ってかんじ。よかった。あらすじもつかめない。ストーカーの物語?違う。人物がイメージできない。なのに、刺さる。「謎の男」なんですね。誰が殺したとか、殺してないとかも謎。女の人って謎に惹かれるんでしょうか?わたしは男だから、その謎がなんだかわかるような気がします。その男は理性で生きているんじゃないんです。流されてはいるけれど獣です。孤高のライオンですね。獲物があれば死に物狂いで喰らい付く。満腹になれば、ただ寝そべって怠惰を貪る。怠惰を貪るライオンの横の水場で、チロチロ水飲んでるのが私たちです。
2014/10/13
アコ
櫻田哲生というひとりの男性の生涯をバラバラに切り取ってバラバラに配置してある不思議な連作短編集。読み始めはかなり「???」だったけれど篇を重ねて櫻田という男の人となりが見えてくるにつれて「おもしろいかも?」という変化が。ただ最後までどこかぼんやりした印象は抜けないままだったし、タイトルの意味もよくわからないまま。このなかでは璃子との少し変わった日々を描いた『窓』と『南』が好き。(というかいつもの荒野さんっぽくて読みやすかったのかも?)
2013/03/23
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