何をやっても癒されない
何をやっても癒されない / 感想・レビュー
ネギっ子gen
著者名と「何をやっても癒されない」という題名に惹かれ購入。「癒されない精神科医のわたし」の冒頭で、「相手が喋っている途中で話を打ち切るのは、至難の業である。気分を害することのないように、あるいは心残りをさせないように、円満に話し合いを終えることが自在に出来るようになったら、これこそが会話のマエストロといえる」と。まったく同感。大学医局の頃の話。精神病院の当直室には西村寿行やゴルゴ13などが「やたらと積んである。要するに、当直のときまで小難しい本なんて読みたくないということらしい」と。これって、わかるねぇ。
2020/01/06
mint
ふと、我々の生きる日々にひそむ奇妙な心の動き。異質さはどこから忍び込み、共存するのだろうか…エッセイ風に綴られる視点の様々。 独壇場はラスト、自殺やクローン人間への考察は本職ならではで最も面白い。病理学的な記述を現代の言語とリアルに置き換えて言及するのが上手く、人間の「ただそれだけで奇妙」の肯定、距離感、観察眼、とても好き。鬱々としたスタイルも含めはまってしまう。
2022/02/28
めん
週刊誌に連載していたエッセイなどをまとめた本。スルーできなかったのは「治りにくい風邪の正体?」のエピソード。自分の感情や気持を言葉にしなければ、客観視できず、不安感や抑うつ感などは、心が感じ取ることを拒むことがある。言葉と結びつかなかった調子の悪さ=精神症状を「治りにくい風邪」と認識してしますような雑駁さによって、心は成り立っている。・・・一般人としては、抑うつ気分を自覚してしまうと、それに囚われて抜け出せなくなるのではとの怖さがある。精神科医としては、早期発見し、早期治療へと考えるのか。図書館で借りた。
2011/11/08
misui
わりと自由なエッセイを集めたもので気楽に読んだ。『ミステリ・マガジン』に掲載されていたという「セールスマンの死」の話が後味悪くて最高。あと父親との記憶術の思い出も感動的だ。他の本で小説化されていたし、よほど重要なエピソードなんだろう。
2011/07/16
くろつるばみ
「観光地にいる誰もが極楽気分なわけではない」という一文が印象に残った。やれ癒しだヒーリングだって、人の心はそんなに簡単にどうにかなるもんじゃないんだよ、と。世の中には「何をやっても癒されない」人がいるのだと。そういう人種だからといって生きるに値しないわけではない、と。「何をやっても癒されない精神科医」である春日先生に言われると説得力がある。
2012/10/08
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