物語消費論改 (アスキー新書 228)
物語消費論改 (アスキー新書 228) / 感想・レビュー
harass
震災後に著者の『物語消費論』を振り返る2012年の新書。冗談のつもりで80年代に書いた物語消費論だったが、当時なかったWeb技術の発達で、消えゆくはずだった「大きな物語」が復興しているのではないかと著者。それも制御不能な陰謀論に近いものがと。物語消費論のおさらいと、現状を20年ぶりに考察。当時の文もある。内容全部に頷けないのだが、非常に面白く読めた。韓国で受容される、「無国籍」ナショナリズムのアニメ宇宙戦艦ヤマトや、江藤淳のサブカルチャー化について、これは他の本で読んでいたはずだが、ようやく納得。良書。
2018/10/15
ころこ
20年前に書かれた『物語消費論』をアップデートしたと著者自身は言っているが、実はかなり屈折している。後半に前回の時に書かれた文章を再録していて、どこをどう評価してよいのかナラティブを複雑さに戸惑う。アングラな話題が消失して、代わりに政治的な話題が浮かび上がる。それは自分の変容ではなく、社会の劣化とでも言いたげだ。本書は3.11直後に書かれていて、最近の著者の言説で誰もが気になっていることがどこから始まったのかが判明する。『物語消費論』で以前、著者が前提にしていたのは、消費社会論やそこから派生したニューアカ
2023/04/11
ゲオルギオ・ハーン
2012年発行。著者が発行当時でも20年前からの持論『物語消費論』をもとに新たに書いたエッセイと以前書いた文章を載せた一冊。仰々しい遠回しな書き方と「僕は以前書いた」と前置きしながら書いているのが特徴。学生の時はそれなりに説得力を感じたが、今読むと、断片的な情報からストーリーを推測することは当たり前のことじゃないかと『物語消費論』の存在自体に疑問を感じてしまった。物語の共有を「公共性」と書くのは嫌で「コモンズ」と書いたり、右翼をライトウイングと書いたりとなんだかよく分からないこだわりが気になる。
2022/11/13
onaka
1980年代にビックリマンチョコ現象を引きつつ、受け手自らが物語を紡ぎながらそれに呪縛される回路を論じた『物語消費論』を、WebやSNSが当たり前になった時代を背景に再解釈した本、ではない。大きな物語が失効しデータベース型消費が前傾化するみたいなことを言いながら、震災後の生き方を論ずる東浩紀あたりの言説を、要するに批判している感じ。依然として生きながらえている「大きな物語」=「仮想の歴史」に逃亡するのではなく、現実の「歴史」という異物を「寓話」に侵入させるジブリ作品に一筋の希望を見出すべし、てことか。
2014/12/02
Takayuki Oohashi
大塚さんの「キャラクター小説の作り方」、「物語の体操」等の創作論に耽溺した僕ですが、今の大塚さんが知りたくて購入しました。相変わらずの大塚節は健在でしたが、以前よりも口調がきつくなっていて、それが時代を感じさせました。大塚さんの言わんとすることよりも、僕は現代のWEBが当たり前の時代にあって、何が物語消費論によると変わってきたのか、ということに興味があって、今こそ、この大塚さんの論がクローズアップされてきたと思いました。本は違いますが、「進撃の巨人」論は面白かったです。
2015/03/03
感想・レビューをもっと見る