恋に至る病 (メディアワークス文庫)
恋に至る病 (メディアワークス文庫) / 感想・レビュー
ナルピーチ
「僕の恋人は150人以上の人間を殺しました」冒頭からの衝撃的な告白から始まった物語。“宮峰望”が受けた小学生時代の壮絶な虐めを切っ掛けに“寄河景”は化物に取りつかれてしまったのかも知れない。心に闇を纏ってしまった景とそれを分かった上で彼女に寄り添う宮峰「僕は君にとってのヒーローなんだから」そうやって自分の気持ちを抑え込む宮峰。二人の歪んだ愛は苦しさを生む。宮峰にとって景と過ごした日々は、とてつもなく純愛なラブストーリーだったんではないのかと、そうあって欲しいと願う自分がいる。そうでないと救われない結末だ。
2021/02/07
nobby
「宮嶺は私のヒーローになってくれる?」純情可憐な美少女が内気な少年に投じた至福、子供じみた一言があらためて切なさ誘う…その一方で、イジメをきっかけに性善説を崩された正義が歪んでの暴走…そこに表れる純愛と狂気の二面性に、たった一人で化け物を守ろうとする姿は何とも意地らしい…予定調和で迎える破綻した事態を揺らがすエピローグに気が滅入りながらラスト4行で問われる衝撃…例え一つの拠り所が覆されたとしても、その始まりは清純と信じたい…そうでないと哀し過ぎる…だって僕は正義の味方じゃない…「僕は、景のヒーローだから」
2021/05/31
茜
帯に「ラスト4行の衝撃」と書いてあるけれど、それよりも私は「自ら手を下さず150人以上を自殺へ導いた殺人犯」という事の方が惹きつけられました。誰からも好かれる寄河景(よすがけい)がどうしてモンスターになってしまったのか。ラスト4行には考えさせられる。そして小学生の頃に交わした「僕はどんなことが起こっても景を守る。味方でいる」という言葉が念頭に残る。途中で一度だけ寄河景の行動を辞めさせられる機会はあったように思う。でも「味方でいる」という約束がその機会を逸してしまったのか。ラスト4行の意味を考えたい。
2021/03/08
ちょろこ
心を翻弄された一冊。斜線堂さん二作品目。完全に心持っていかれたな。誰からも好かれる僕の大切な美少女は化物?そんな一抹の不安を抱きながらも彼女のヒーローであり続けたい僕。小学生でヒーローを決意し「君が地獄に堕ちても僕は君が好きだ」こんな照れるセリフを小学生から高校生へと成長する世界に存分に盛り込み淡いピンクに色づかせながらも容赦なくぶちこんでいく衝撃。巧いというか、やられたというか…。これはどう思ったら良いの?どっち⁇最後の最後まで斜線堂さんて読み手の心を翻弄する…もう、良い意味でズルい。
2021/05/02
オセロ
初読み作家さん。人の感情を読み、行動を誘導するのが上手い寄河景。とある出来事から景のことを見守ると約束した宮嶺望。そうして2人が仲を深めていたある日、50の課題を達成したら自殺する青い蝶というゲームを景が作り出し。この青い蝶を巡って人間の主体性を問う物語。 一見すると不可能に思える青い蝶というゲーム。それでもカリスマ性溢れる景なら本当に出来そうでゾッとする。そして景が如何にして青い蝶を思いついたのか、何が景をそこまでして突き動かすのか。至るところに潜ませた伏線を回収する結末は見事でした。
2023/04/02
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