なぜ怪談は百年ごとに流行るのか (学研新書)
なぜ怪談は百年ごとに流行るのか (学研新書) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
綿々と続く怪談ブームをスポットに当てた新書。著者は幻想小説や怪談の名物編集者、東雅人氏という素晴らしさと紹介されている作家の豪華さに眩暈がしそうです。怪談は一時、文化価値が低いものとして見なされていた時もありましたが怪談があるからこそ、文化が円熟できるきっかけにも成り得たのですね。震災後、怪談の意味はどのように変わるかと言う考察も怪談の転換期にもなると思います。NHK放送の怪談番組や紹介されている怪談の多くに読んだものがあったのが嬉しかったです。怪談作品の年表も嬉しい限り^^
2011/10/30
ぐうぐう
二百年前、百年前、そして現在の怪談ブームを分析する東雅夫の『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』。実話とフィクションの不穏な境界領域に生成する、いわゆる虚実皮膜な怪談の特質を、東は名作怪談を丁寧に紹介しながら明かしていく。幕末の動乱期に繋がる社会不安の兆しがあった二百年前、明治の三陸大津波と大正の関東大震災が起こった百年前、そしてバブル崩壊から東日本大震災としての現在に、怪談が盛んになった理由を、(つづく)
2012/09/07
mittsko
日本怪談文芸史の決定版、かな。文句なし、流石の筆力で、読み物としても堪能できる。客観情報を並べていくだけなのにね、アンソロジストの匠の技なんだろうか… すごいなぁ、ホントにすごいなぁ…(ΦωΦ) ※ 2011年8月刊。先んじていた怪談文芸の発展を追って(90年代、いわゆるホラー・ジャパネスクが台頭)、実話怪談の話芸が発展していく時期。東北で先鋭的な怪談活動を始めたばかりの東先生にとっては、東日本大震災の直後。「慰霊と鎮魂」の怪談文芸の評価を定めんとする気概に満ちた一冊。頭がさがる
2023/08/28
ペペロニ
あんまり「なぜ」については深堀りしていないけど、怪談文学史としては怪談に興味のある人なら一読の価値ありと思う。特に巻末の怪談文芸年表はファンなら垂涎モノに違いない。
2020/12/27
ハルバル
江戸時代末期の文化文政期、明治大正期、そして平成の怪談ブーム…となぜか百年ごとに怪談の黄金時代が到来しているという偶然の符号に着目し、アンソロジストにして怪奇の先達、東雅夫氏の語る日本怪談文芸史。執筆中に起きた東日本大震災によりかなり本書の構成は変わったというが、「怪談とは鎮魂慰霊の文学」という結論になり結果的にはよくまとまっている。ただタイトルの「なぜ」への回答は曖昧。言ってしまえば文化の爛熟と社会不安だろうか(あと発表媒体の発達)。どちらにせよ気持ちに余裕がなければ怪談は生まれないのだ。今は黙すべし?
2020/03/29
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