巫子: 自選少女ホラ-集 (学研M文庫 H み 3-1)
巫子: 自選少女ホラ-集 (学研M文庫 H み 3-1) / 感想・レビュー
mii22.
表題作「巫女」は私小説ではないが体験が七割入っているとのこと。少女期に体験したことが後々少女をモチーフにした蠱惑的で容赦ない残酷さと一途な情愛をあわせ持つ耽美で背徳の渦巻く物語を生み出すことになったのだろうと感じた。少女期に戦争を体験されたことも数々の生と死の狭間に漂う夢幻の世界を描くという皆川作品の原点を見せられた気がした。また『蝶』や『少女外道』を読みたくなった。皆川魔界にどっぷりと浸りたくなった。あぶない。危ない。
2019/08/15
*maru*
皆川さん32冊目。皆川さんが描く“少女”は本当に魅力的だ。あどけなく可憐なようで、“女”を強く意識させる。夢からの目覚め、死者との対話、追想や既視感との戯れ。音を視る、香りを愛でる、色は物語る。少女たちの情感がそのまま読み手の五感に流れてくるような読み心地だった。相反するものの複雑な美しさや蠱惑的な陰影、妖しげな官能美など、氏の描写には他の追随を許さない凄みがある。幻想性と実感できる確かな恐怖感のバランスも見事。『夜の声』『骨董屋』『山木蓮』、自身の体験がベースとなった表題作『巫子』が特に素晴らしかった。
2019/07/02
藤月はな(灯れ松明の火)
過去からの自分が現実へとすり替わるラストが衝撃的な「夜の電話」、全ては等価に、幸せを独り占めしたいなら・・・・な「山人」、回想の殺人とも言える「山木蓮」、ばたべたと付き纏う少女への潔癖な嫌悪と悪意のある「私」の象徴と自己の同一化が見事な「冥い鏡の中に」がお気に入り。表題作は7割が実体験というあとがきに驚愕。鵜呑みにする馬鹿な大人とその大人に信憑性を与えるために熱狂を演じる狡猾な大人と馬鹿にしながらも安寧を得られるために逃げ出さない子供の傲慢さの描写がねっとりと心を捕らえる。
2012/11/01
つらら@道東民
皆川祭り5。少女がもつ悪意ある歪んだ世界が形になると、この短編集になるんだろうな。薄氷の上を歩かされてるような不安な気分になる。ミステリー的だった「冥い鏡の中で」が好き。村田沙耶香さんの壊れていく少女たちも、この流れにいる気がします。
2013/10/22
那由多
作者本人の実体験も含む、濃ゆい短編集。全話ダークサイド。
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