江戸夢あかり: 市井・人情小説傑作選 (学研M文庫 き 8-2)
江戸夢あかり: 市井・人情小説傑作選 (学研M文庫 き 8-2) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
11人の作家によるアンソロジー。名作『江戸職人奇譚』に収録されていても良いような佐江衆一「いぶし銀の雪」。初代市川團十郎が舞台上で共演者に刺殺された謎を、150年後の八代目團十郎が解く、南原幹雄「初代団十郎暗殺事件」が珠玉の短編でした。また巻末解説を読んで杉本苑子「泣けよミイラ坊」や山本周五郎「なんの花か薫る」、池波正太郎「蕎麦切おその」の味わいが一層深まりました。
2018/11/19
山内正
三十年経事の直しする十蔵 大名や金持ちは家宝として雪舟や狩野派の絵を持ちたがるこれよう掛けてますけど贋物ですわと栄次郎が 本物かどうかは店に関係あらしまへんと十蔵が 古筆見の極札があれば通用すると 最後に風帯を縫い付け 仕上がる 長屋のおけいの父親が借金の為に 岡場所へ売られる、お前何とか出来んかと母親が聞く 栄次郎は手持ちの二両余りを差出し 後は払うと取り立てる男に話を付け お前残りの金どないするんや?と取り掛かってる俵屋宗達の雁の絵を 上隅指で剥がす 二枚の絵が これでええのや 売れる筈
2021/05/18
山内正
六十を超えた小柄な老人が とっくに店仕舞のはずが開けて酒を飲む 今年も神無月になったな まだ起こっちゃいねえと話す 八つの娘の眠る横でお手玉に小豆を入れる 五年前に遠州屋で十両盗んだのが初めてと思っていた 出口の鮮やかさと手文庫だけを 盗った 器用で頭がいい 堅気に違いない 金が要らなくなると止めるだろう 手掛りはない 大工じゃねえかと考えた事も 家を建てた商屋だけじゃなかった 夜明け前までには帰ってくる なあおたよ、じゃあ行ってくる 神無月で金が要る商売もねえ 岡っ引きは暗闇の道を行く 男も道を
2022/02/28
山内正
お紺簪と売ってるが売れずにいる 雪を被った簪はと持ち出され 所詮女の簪と店の隅に番頭は置く 平太だ平右衛門って名だよ今 平ちゃん?十八年振り親父は去年死んだ 許嫁いたっけ?今は商売よ あの鎖長過ぎるのさと秀三郎が 場所と刻だけ書いた文 誰が行くものか 帯を結び化粧し 店を出て 言われるままに帯を解く 幾度も呼んださ鰻食いに行こうと 平太は惚れたんなら女房と別れさせてやろうか お紺ちゃん俺はね 文句の付けようのない暮らしをしてるんだ、泣かしたく無いんだお紺ちゃんをさ 深酒を飲み別れた 声を上げて泣いた
2021/01/10
山内正
おきぬは 決まった板敷に座り 半纏に手拭いをかけ小肥りの人が 三日毎に来ると 切れた鼻緒を預かる 六十八の母と二人暮し 寝込んだまのまで 店に加賀藩の老侍が国に戻る旨 家老から頂いたと銀細工を見せた 蓮の上に座る蛙が見事に 久作と名の細工師だと あの久作さんだ! おきぬは驚く 次の夜 十年余リ前だよ金沢でねと 親父より腕は上だと思って上方へ 屋台で酒を飲み話だした 四十になって気付いたんだ あの槌音にね! 音で解るんだよ上手かと 京に行こうと思うよ 私はこの人とは行けない きっと帰って来る何年かしたら
2020/04/12
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