ウォーク・ドント・ラン
ウォーク・ドント・ラン / 感想・レビュー
ケイ
1980年の7月と11月の二人の対談。春樹はまだ2作しか書いていなくてバーも経営も続けている。そして龍は「コインロッカーベイビーズ」を書く前後。語る量に差はないが、龍の方が熱を込めて正直に語っている。この時点で、春樹が3歳年上でデビューは3年遅く、龍の一作目は物凄く売れたという事が関係しているのか。龍が語る。「中上健二に君がデビューして楽になったと言われたが、春樹がデビューして僕は楽になった」「幸福の象徴であるティッシュが校内をふわふわと飛んでいるんてのを書けるのはすごい」と。春樹は構えているようだ。
2014/09/22
masa
龍×春樹、うら若き日の対談。まだ春樹が売れる前で、龍の方が人気だったというのが伝わってくる。若気の至りな発言も、現在のプロップスからキレに感じられる。それを差し置いても、当時から誰とも異なろうとし、実際に異なり冴えていたのがよくわかる。書くことに真摯で、比喩の考え方も熱い。それでも、春樹が奥さんに「くだらない原稿書くより洗濯物干す方が大事」と言われるとか、イメージぶち壊しで面白く、猫、ジャズと話が尽きない。ファンは是非、最終章「僕らが演奏家だったら」で始まる龍から春樹への言葉を自身で確認して痺れて欲しい。
2018/01/03
キク
春樹さんがピンボール、龍がコインロッカーを書いた後の2人の対談集。僕は当時買ったけど、今は絶版。講談社ではなく、2人の村上がどこかで判断したんだろう。今から見ると、2人ともあけすけに自作や自分を語っている。2人の仲が良かったこともあるけど、(龍はデビュー前の春樹さんのジャズバーの常連だった)二作を書いただけの若者だったわけだから。その分、読む方としては面白い。龍が最後に語る「僕らが演奏家だったら一緒にやれるのになぁ。小説家は、同じ曲を演奏することができない」という言葉がその後の2人の歩みと確かに重なる。
2021/04/11
いっち
村上龍さんは『コインロッカー・ベイビーズ』を書いた後、村上春樹さんは『羊をめぐる冒険』を書く前の対談。対談後二人がお互いのことを書いているのが良い。特に、村上龍さんの「村上春樹のこと」が良い。「知り合ったばかりの音楽好きの少年が二人、部屋でレコードを聞いている」「一人が「いいなあ」と言って、もう一人がうなずいただけで、二人の少年はお互いの部屋へ帰っていく」「ぼくらが演奏家だったらいいのになあ」「小説家は、同じ曲を演奏することができない」小説の一場面のように、二人の関係性や村上春樹さんへの信頼を描いている。
2021/08/08
キジネコ
「コイン~」の後の村上龍と「羊を~」の前の村上春樹の対談。ここに今の僕より 若い二人がにいます。語彙が足りず、生意気で横柄で、怖いものもなさそう・・当人達は嫌がるけど、否定も肯定も残した言葉は彼らと読者の歴史。時代や世界や状況を映す鏡に曇りなく、切り取る刃物の鋭さに迷いなく、今尚その輝きを失わずにいる二人の声に耳を傾ける、自身がここにあることが嬉しい。二人が危惧した未来の危機は、予言めいて半ば現実となり崩壊を見届けた彼らの声は、精神の再興に寄与できたか? What happend is all good.
2014/12/01
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