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わたしが・棄てた・女 (講談社文庫 え 1-4)

わたしが・棄てた・女 (講談社文庫 え 1-4)

わたしが・棄てた・女 (講談社文庫 え 1-4)

作家
遠藤周作
出版社
講談社
発売日
1972-12-01
ISBN
9784061311411
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わたしが・棄てた・女 (講談社文庫 え 1-4) / 感想・レビュー

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遥かなる想い

遠藤周作の本には、キリスト教を主題に置いた重い話と、軽いノリの話があるが、駅前の書店の帯に惹かれて購入。吉岡努という若い学生が体の関係を持った後、捨てる森田ミツという女性の人物造形がよい。まだハンセン病が差別的な病気だった時代、けなげに生きていく様が丹念に描かれている。

2013/01/05

アン

娘の本棚から。恋に憧れ相手を懸命に慰めようとしますが棄てられたミツは、死の床でもその彼の名を呼んだ…。自分の夢を捨てたり損ばかりしてきたようなミツですが、彼女の「愛徳の行為」は一時の憐憫の情というより自然に育まれたものに近い気がします。ミツが苦しんでいる人を見るのが耐えられず一途に手を差し伸べ続けた事は、遣る瀬無い気持ちにもなるのですが、同時に聖女のような慈愛に満ちた美しさを感じざるを得ません。ミツは人間の根源的な弱さを見つめ痛みを知り、他人の哀しみに寄添い崇高な愛情というものを示してくれた気がします。

2019/05/25

優希

重い作品でした。キリスト教の中でもかなり重いテーマだったのではないでしょうか。直接的にではないですが、1つのキリスト教を見たという感じがしました。2回目のデートで旅館で体を奪われたミツは2度とその相手に誘われることがなかったのが辛いところでした。棄てられるという不幸。青年が熱を上げた別の女性との結婚直前にミツの体に癩の兆候が出るというのが運命の皮肉ですよね。疑うことを知らず、崇高な愛に生きる無知の悲しみ、無意識に傷つけることの罪。どちらも神の犠牲者だったように思えました。

2014/09/11

ach¡

弄んで棄てた後「一度寝た女が人生を少しずつ滑り落ちていくのを知ると一種の感傷のようなものが起こる」とのたまう男が主人公こと下衆の極みクズ男なのだが…私は彼に人間の哀しさを見た気がして侮蔑することは出来なかった。もう一人の主人公ミツは聖女として扱われるが、他者の憐憫に寄り添いたい、私が何とかしてあげたいと思うのもまた人間の傲慢さではないかと…残酷な気づきを得てしまい悩む。たぶん自分にも同じきらいがあって痛い所を衝かれたからかもしれない…本人は決して割を食っていると思ってないし本能的な反射に近いと思うのだが…

2016/01/07

mukimi

全体として灰色の靄がかかったような本で、麗らかな春の陽気の中読み始めるには相応しくなかったかも…と思いながら読み進めた。私も主人公の吉岡同様冷ややかにミツのことを見ていたのかもしれない。だからか、最後の修道女の手紙では混乱し、衝撃で涙が溢れた。無知や若さはそれだけで美しいが、人生はそれだけではない。知りたくないことも知り、年をとりながら、それでも私達は生きていかなければならない。そんな中に描かれる無垢で純粋なミツを真摯に美しいと思える心をどうか失わずにいたいと思った。

2019/04/08

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