怪奇小説集 (講談社文庫 え 1-7)
怪奇小説集 (講談社文庫 え 1-7) / 感想・レビュー
HANA
アンソロジーピースとしては外せない傑作「蜘蛛」から、著者の体験談を語る「三つの幽霊」、幽霊屋敷ルポに短編小説と収録作が幅広いのが特徴。しかもそれぞれ面白いという純文学作家遠藤周作の違う一面が見える一冊。何となく昭和という時代を感じさせるものも多く、鬱々とした心象風景が広がる「鉛色の朝」とか特にそれが顕著。「針」に「蘇ったドラキュラ」等オチがきっちりついた作品も怪奇とは言い難いが面白いかな。二、三の作品を除いては怪奇の主体が人間の心となっており、著者のスタンスを知ると同時に嫌な気分になれる事請け合いでした。
2021/07/15
藤月はな(灯れ松明の火)
キリスト教の教えを反映した作品を多く、描いていた遠藤周作氏による実話怪談も含む、怪奇小説集。どの話も細部に厭な何かがあって落語みたいなオチだとしても安心できないのが余計に怖い。『あなたの妻も』はろくでなしの男のために母が女になる時の修羅の一瞬に起こった結果に心胆、震えるしかない。しかし、ちくま文庫の文豪実話怪談でも読んだ『三人の幽霊』がやっぱり、断トツで怖い(特に熱海の話)
2014/08/13
tomi
実話怪談ものから始まる15の短篇集。怪異を扱った作品は少なめだが、ミステリアスな話やコミカルな狐狸庵モノの延長のような話、えっ?というオチのある話など、エンタメとして面白い作品揃い。昭和30年代の週刊誌連載で、当時の世相や戦争の影を感じさせる作品も多く、戦地でのいじめの復讐を描いた「初年兵」、シベリア抑留での出来事をテーマにした「鉛色の朝」が特に秀逸。
2024/03/06
TSUBASA
遠藤周作の幽霊屋敷探訪記や自身が体験した不気味なエピソード、他ちょっとした怖さのある創作短編を集めた一冊。身の毛もよだつ恐ろしさ、というよりうら恐ろしいという感じ。私が好きなブラックなショートショートみたいなのも多かったが、実話系で言ったら自身が体験した『三つの幽霊』がスタンダードな幽霊話っぽいけど自分が語ってる分、筆が乗ってた気がする。
2020/06/04
Yu。
‥怪談・不可思議・人怖・ブラックユーモア‥とテイストの異なる様々な出来事を見聞きした著者(実はロマン派)による15編の怪奇譚。。素直に怖い‥「蜘蛛」。モノに篭もる念って恐ろしい‥「黒痣」。お人好しも程々に‥「鉛色の朝」「霧の中の声」‥等々、どれもが甲乙つけ難いほど魅力的なのだが、なかでも“そう落とすか‼️(。>艸<)ククク”な「甦ったドラキュラ」と、唯一 “この先を知りたくない‥” と思わせ、そしてやはりな結末が待っている「あなたの妻も」(この話だけはもう二度と読み返したくない)は、特に印象深い。。
2020/07/27
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