雪明かり (講談社文庫 ふ 2-1)
雪明かり (講談社文庫 ふ 2-1) / 感想・レビュー
タツ フカガワ
再読。市井物、武家物各4編を収録。うち5編は博打打ちや武士たちのほのかな恋心を下地にした物語。たとえば、下級武家の一人娘を見初めた三男坊武士の奮闘に滑稽味が滲み出る「冤罪」や、二百八十石の家を捨てて女が住む江戸へ向かう男の決心を“いま、跳んだのか”という言葉で終わる表題作など、藤沢さんはこの“ほのか”の塩梅が絶妙。ラブストーリーの名手でもありました。
2023/08/06
ちゃいろ子
表題作がとある藤沢映画の原作になっていた。映画とはだいぶ違っていたが、それでも映画でも感じた優しい希望が見えほっこり。 入墨ーろくでもない父親のせいで苦労を重ねた姉の気持ちもわからず、その父親に同情する妹にイライラしたが衝撃のラストに! 冤罪ー切ない話かと思いきや幸せなラスト。 暁のひかりー冒頭の情景描写、夜の闇の世界から、柔らかい朝の光の中へと変わる町並みを主人公の身の上と絡ませて描かれており、その情景が目に浮かぶようで素晴らしかった。最初のその文章だけでどっぷりと世界に引き込まれてしまった。
2021/06/09
抹茶モナカ
短編小説8篇収録。雑誌『小説現代』で発表した作品を発表順に収録している本で、他の単行本にも収録されているものを集め直した作品集みたい。読んでいて、暗い色調が心地よく、生活の苦しさとか、人間の業だとか、そういうものを抱えながら生きる事について、考えさせられた。安直な大衆小説とは、ちょっと違う。文章も好み。
2016/02/06
AICHAN
もしなれるとしたら武士にと思っていたが、「冤罪」を読んで貪官汚吏の下で働くのは私の性格では無理だと思った。それに低家禄の下士たちは内職をしないと暮らしていけず、しかも次男以降は婿に行くしかないので婿入り先を必死に探した。そんなあさましいのなら武士は嫌だと思った。私は金儲けが大嫌いな性格だから商人は絶対無理。手が器用だから職人がいいかな。武士にむしり取られる百姓になるのは嫌だし。でも、身分が固定されていた江戸のような時代は嫌だな。この国は歴史を逆行しようとしているから身分制社会になるかもしれないけど。
2015/12/29
AICHAN
NHKの『タイムスクープハンター』が凄い。男は月代を本当に剃ってチョンマゲ結ってるし既婚女性は眉を剃ってお歯黒しているのだ(俳優たちは大変だろう)。しかも着ているものが汚い。顔が白くない。家の外壁も内壁も襖も畳も汚い。時代劇を見慣れていると画が薄汚いと感じるが、こっちのほうが本当なのだ。当時の仕事や風俗などをこれまたリアルに見せる。この『雪明かり』でも当時の風俗や人情などを細緻に描いている。いかさま博打の穴熊、七分賽、毛返し…なるほど。クモの巣や雑草を描いてくれて感激する。リアルさも大切だ。
2015/12/17
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