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針のない時計 (講談社文庫)

針のない時計 (講談社文庫)

針のない時計 (講談社文庫)

作家
カーソン・マッカラーズ
佐伯彰一
田辺 五十鈴
出版社
講談社
発売日
1971-11-22
ISBN
9784061330245
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針のない時計 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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希い

白血病に罹り死の宣告を受けた男、人種問題に対し意識の変遷してゆく三代の親子、自分の正体を知らない青い眼をもった黒人の孤児、本作はその三者の人生を交錯させ、南部地方独特の社会問題のみでなく、個人の心に潜む醜悪さをも見事に抉りだした、マッカラーズ最後の長編小説である。南部ゴシックの特徴は、社会レベルでの問題事象を描くことにではなく、その社会構造を生み、また維持する住民一人一人の心の闇を浮き彫りとすることにある。その点で本作の成功を凌駕する作品を挙げるのは中々難しそうだ。仮借ない強靭な文体が強い印象を残す作品。

2013/03/07

algon

講談社全集版で読む。薬剤師マローンは白血病で余命約16ヶ月と宣告される。しかし現実として受け入れるすべを知らず只々茫洋とした時を過ごしていく。一方、白人と黒人には違った判決をして当然という極端な志向を持つ老判事は同居の孫ジェスターを愛し、同年の碧眼黒人少年シャーマンを秘書として雇い、その手際に徐々に依存していく。老耄のせいか人種偏見もシャーマンに対しては緩んでいたのだが…。結末を予測できない巧みなストーリーと根深い人種偏見の在り様を曝け出した南部派の傑作。暗い話だがマローンの動揺は全く現実的。身に染みる。

2021/07/12

みつ

なんと素晴らしい本だろう。読書メーターにはページ数のデータはないが、1971年刊の単行本で372ページだからかなりの長編といっていい。舞台は厳然かつ公然と黒人差別が残る1953年の米国南部の街に限定され、白血病で余命を宣告された薬剤師、息子を喪った85歳の老判事、その孫、判事宅に住む青い眼と黒い肌を持つ少年が主な登場人物。物語の最後に大きな悲劇が待つが、そこに至るまでは死への恐れ、世代間の愛情と溝、自分と環境への苛立ちが淡々とした筆致で描かれる。それでいて全く弛緩しないのは、作者の感性と温かい眼差しゆえ。

2021/02/11

宮永沙織

南部貨幣の復活を望む旧世代の代表判事、白血病にかかり死との恐怖に苦しむマーロン、青い目をした黒人の孤児シャーマンと友達になりたいと願う判事の孫ジェスター。善悪、愛憎、相反する心を持つ人間の心の弱さを受け入れつつ、慈愛に満ちた筆致で描く。法整備で差別撤廃を訴えても、人間の心はそう簡単に変わらない。しかし、徐々に新しい世代は生まれてくるのだと死に満ちた作品でありながら希望を感じさせる傑作。

2013/10/31

mamiko_w

登場人物が全員息苦しくて、読んでいてしんどい気もしたけどこの小説はすごい、と思う。好き、とかおもしろい、とかではなくすごい。

2019/05/16

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