粘土の犬 (講談社文庫 に 2-2)
粘土の犬 (講談社文庫 に 2-2) / 感想・レビュー
Yu。
まずは、血の繋がった親子だからこそ判る母親の無実の証明に奔走する頼もしきちびっこ探偵「かあちゃんは犯人じゃない」でハラハラほっこりと… そしてノッポでおっとりな植物オタクの頭脳派の兄雄太郎とちびでぽっちゃりな行動派の妹悦子という仁木兄妹の活躍が描かれる三話の事件簿でやはりここでもハラハラほっこり感で和みつつ… 五話目のアイロニーかつヘヴィネスなダークシリアスミステリで勝負を賭ける(なんの?)「粘土の犬」が見事にお口直しの役割を果たす。。といった五話から成る仁木ワールド。
2016/08/19
pepin
仁木兄妹シリーズを追いかけたくて、やっと入手。「灰色の手袋」当時の小さなクリーニング店の人間模様が興味深い。傷痍軍人が当たり前に身近にいて、殺人事件は起こるけど、兄妹の会話が明るく、読後感が良い。仁木さんの持ち味が堪能出来ました。表題作「粘土の犬」はノンシリーズ。素晴らしい倒叙ものだった。狡猾な犯人が得意げに発したセリフで墓穴を掘るのには溜飲が下がったが、盲目の少年が粘土で作った「犬」が哀しすぎる。障害者に対する犯人の卑劣な態度と驕りに、ご自身も障害者だった作者の静かな怒りを感じた。
2020/02/16
kinshirinshi
仁木悦子さんの初期の短編五編を収録。うち最初と最後がノンシリーズで、間に挟まれた三編が仁木兄妹シリーズになっている。同じ昭和三十年代の東京を舞台にしても、横溝正史の描く犯罪はやはり都会的だが、仁木さんの描く世田谷には、どこかミス・マープルのセント・メアリ・ミード村のような、のどかで牧歌的な雰囲気がある。事件が起こるのも、デパートやキャバレーや銀座の宝石店ではなく、お隣の家や行きつけのクリーニング店や歯医者など、「ご近所」ばかりだ。最後の表題作だけが、スリリングな倒叙ものになっていて異色。
2022/02/07
マヌヌ2号
短編5編。仁木悦子さんの本はこれが初読だったんですが、平成生まれということもあり、昭和のどこか仄暗い日常の描写から最近の小説では味わえない雰囲気を感じました。それだけに、そんな雰囲気からふわりと浮いているような仁木兄妹の様子にもなんだか不思議な明るさを感じて、それもまたよかったですね。仁木兄妹が出てくる3編の中だと、手袋の象徴的な使い方や二転三転する推理が冴えてる「灰色の手袋」がすきです。真相のえぐみもたまらん。ノンシリーズだと表題作がベスト。キレキレな倒叙ミステリものとしての面白さと痛切な余韻の融合~!
2016/12/11
あさ
短編集。仁木兄妹ものは既読だったが、改めて読んでも楽しい。表題作が一番切れ味がよくておもしろかった。
2023/06/12
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