四つの終止符 (講談社文庫 に 1-8)
四つの終止符 (講談社文庫 に 1-8) / 感想・レビュー
夢追人009
西村京太郎さんのデビュー作でこれが3度目の再読になりますが最後にしようと思っていまして今後600冊を超える膨大な作品の読破に挑みますよ。本書は耳の聞こえない聾者をテーマにしたヒューマニズム溢れる永遠の名作ですね。下町の工場で働く聾者の青年・晋一の病弱な母が変死し彼が買った栄養剤から砒素が検出された事で警察は晋一を逮捕する。彼は自分は無実だと主張しながら、獄中で自殺する。そして彼と親しかったバーの若いホステス幸子も後を追って自殺する。バーの同僚のお時さんこと時枝は新聞記者の古賀と共に事件の謎を追うのだった。
2023/09/30
夢追人009
西村氏の処女作です。最初から既にこんなにもトリッキーな作品を書かれていた事に驚嘆しましたね。でもそれ程の人気が出なかったのはあまりにも暗い話だったからでしょうね。日本人は幾ら自殺者が多いと言っても本書では3人も出ているのですから自然に気持ちも暗くなりますね。私としてはどんなに辛くても皆それぞれに強い気持ちで前向きに戦って欲しかったです。一番残念なのは3人目の奥さんで真相を知っていながら自らの生を閉じてしまうなんて・・・・。怒りの気持ちを内向させるのでなくリベンジで思いっ切り外に発散させて欲しかったですね。
2018/03/10
chiru
聴覚障害者が被疑者となる異色ミステリー。驚いたのは、母親殺しの犯人として取調べを受ける主人公が、本のちょうど真ん中ほどで、自殺してしまったとき。障害者とのコミュニケーションの不在や偏見がテーマで、帚木さんの作風に似てる気がしました。同じ世界に生きてるはずなのに、誰にも声が届かず、誰の目にも自分の本当の姿が映らなかったら…。非情な世界で、ただ生きたかった主人公の、声なき叫びがいつまでも耳に残ります。『色んな要素が偶然に重なり、動機不明な犯罪が出来上がる』というプロットも好みでした!! ★4
2018/12/06
papako
面白かった!西村京太郎非十津川作品。聾者の青年晋一の母親が毒殺された。犯人は晋一としか思えない。逮捕された晋一、しかし彼の無実を信じる女給の幸子、その同僚の時枝は周辺を調べ始めるが、晋一は自殺してしまう。果たして犯人は?当時の差別表現は、今読むとすごくキツイ。それだけ差別されていたということですよね。手話なんて表現すらない。少しずつの事実と違和感から、ちゃんと真実にたどり着いたのは、思い込みで考えない時枝だから。聾者の弟を亡くした幸子の後悔が悲しい。4人の命を巻き込んだ動機ってなんだろう。
2020/07/13
セウテス
〔再読〕目を閉じれば、資格障害者の苦労は解るだろう。しかし耳を塞いだところで、聴覚障害者の実は解らない。フランスの教育者の言葉らしいが、本書を読むと心に深く突き刺さる。聴覚障害者の晋一は、母親を殺した容疑で逮捕されるが、障害を理解しない社会や人たちの中に居るという事は、唯単に容疑を持たれたという事と別次元の問題なのだ。ミステリーとしての意外な犯人まで、実に正統派の作りを楽しめる上に、社会問題を描いた作品としても極上の一品だろう。そこに登場する人々のなんと生々しい事か、是非とも読んで欲しい西村作品の一つだ。
2016/05/29
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