一〇年代文化論 (星海社新書 46)
一〇年代文化論 (星海社新書 46) / 感想・レビュー
harass
2007年ごろからのネット界隈で「残念」の意味の変化を考察。「残念な美人」といったこれまでにない微妙なプラス要素が加わっているという。ラノベアニメボーカロイドアイドルでのキャラの意味合いなど。これら文化それぞれの要約でもある。自分にはほぼリアルタイムで知っているものばかりだが書籍内で語られるとこそばゆさがある。だがそれらからこのような論考にまとめてあることに驚く。自分もほぼ同じものを見ていたのだが…… こういうものがあったという、記録としての資料としての価値もある。軽い読み物として。
2017/06/26
ころこ
10年代文化の萌芽が0年代の終わりにみられるという仮説のもと、2007年から特徴的にみられた「残念」という言葉の使い方の変化に、10年代文化が表象されているのではないかという主張をしています。著者によれば10年代の「残念」とは、①長所、短所とも否定せず受け入れる自由さとおおらかさを持っている②短所を「あえて」受け入れるオタク的な解釈を拒否する③キャラとして使うことが有効なので、コミュニケーションが苦手なひとを助けてくれる、というものです。独自の言葉の定義をして、分析をしていく方法がとられているので正攻法で
2018/05/27
しゅん
再読。さやわかさんは実に曲者だと思う。「残念」というキータームひとつで時代のコアを抽出しようとするのだが、論旨の作りに穴がないし、平易な文章使いながらも浅い議論になっているわけではなく、思想的に深く込み入ったものの噛み砕き方が秀でている。普通のおっさんっぽく装っておきながら非凡でなければ書けない言葉を持っている。2017年から見れば本書の論旨は当てはまらないんじゃないかという意見も頷けるところはあるにはあるが、「残念」的な感覚が意識されないほど一般化しているということなんじゃないかとも思う。
2017/09/10
サイバーパンツ
2007年以降に登場した「残念」という言葉の意味がポジティブに変化していったことを分析することで、10年代の文化と社会を読み解こうとするもの。多ジャンルの文化を「残念」というキーワードのもとにまとめあげる要約力は流石だし、学術的な理論やオリジナルの概念を用いないことで、サクッと読めるのに捉えどころのない今の空気感を伝えることにも成功しているとは思うが、いかんせん弱い。新しいものを提示するというより、今から未来へ至る道程を示そうとするものなので、それで良いのだろうけど。
2018/01/25
緋莢
「2010年代の若者文化は、<残念>という思想に基づいた文化だ」ネガティブな言葉として使われていた<残念>に、「悪気のない言い方」、「欠点をチャームポイントとして温かく受け入れる」というような使われ方が増え始めた。2007年頃から、ポジティブに使われ始めた「残念」という言葉を軸に、ネット、ボーカロイド、ライトノベルなどを絡めて2010年代の若者文化を探る。
2017/06/11
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