灰色のダイエットコカコーラ (星海社文庫 サ 2-1)
灰色のダイエットコカコーラ (星海社文庫 サ 2-1) / 感想・レビュー
hit4papa
北海道の田舎に住む青年の魂の叫びを綴った連作短編集です。主人公は、一廉の者になろうと足掻くものの、何者にもなれない、ただの「肉のカタマリ」19歳。グロテスクで残酷で陰々滅々とした物語です。中上健次『灰色のコカコーラ』のオマージュでしょうか。結局、特別な自分を信じていた青年が、現実を知りちんまり収まるお話ですね。「がんばって働いて、家族を路頭に迷わせないようにしよう。お父さんマシーンになろう。小市民の道を、歩んで行きます。僕は今年、二十一歳になる。あはは。」・・・あはは・・・
2020/05/18
TSUBASA
「覇王」として人々の上に立ってきた祖父の直系の孫である「僕」。人々の頂点に立つべき資格があった。しかし、そんな理想はあったが19歳になる僕は何もない北海道の内地に住む無力なフリーター。果たして「肉のカタマリ」である一般人から脱してびかびかと輝く虹色の道を歩むことは出来るのか。実に中二的だけれども実に人間的で面白い作品だった。選民的な思想の彼を岐路に立たせたのは抜き差しならない生と死。自分はどこか違うと思いがちな青年が非日常を通して覇道に目覚め、そして幸福に目覚める様にカタルシスを覚える。
2014/12/07
harass
正しい厨二病小説。地方の田舎町に住む19歳の主人公は平凡な周りの人間とは違うという気持ちがあるが、能力も無くバイトで日々を無為に過ごしていることに苛立ちを覚えている。この鬱屈と孤独をこじらさせた彼の気持ちに非常に共感する。これは自分の話だと。この特有の幼児性と残虐性は私小説を読んでいるような痛さと甘えがある。個人的に第一章以外は蛇足のように感じた。自らの荒ぶる厨二心を鎮めようと無理に話を作ったかのようだ。この作家はアジテーションとか呪詛というか絶叫というか、ひどく印象に残る言葉遣いがある。才能だなと感心。
2014/03/21
東京湾
何もない北海道の街。何もない単調な日々。何もない十九歳の自分。「肉のカタマリ」でしかない凡人たちを軽蔑し、「覇王」だった祖父に憧れ、自身もそれを目指した過去と、結果「肉のカタマリ」になってしまった現在。何者かになりたい、自分は普通とは違う、そんな十代の抱えるコンプレックスを暴力的なまでに肥大させ、著者独特の筆致で描いた、暴走青春小説。やはり凄まじい。面白いと感じる前に、物語に気圧されてしまう。拗らせきった言動や心理描写は流石のもので、破滅的な展開から収束に至るまでは荒唐でありながらもまとまっていた。傑作。
2017/08/05
じゅむろりん
若い頃ってこんなんだったっけ?もー思い出せません・・・。破滅的で独善的で自分が特別なんだと思ってしまう無敵の時代。そのエネルギーをどう使うかを考え始めた頃,徐々に気づいてくる「自分」を受け入れるそのときまで続く吐きたくなるような感情・・・。強烈な本でした。
2014/03/22
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