ふたりのイーダ (講談社青い鳥文庫 6-6)
ふたりのイーダ (講談社青い鳥文庫 6-6) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は、原爆という重いテーマを背負っているために、童話としての完成度は、ややもすると低いものになりかねない危うさを背負っている。それを救っているのが、椅子の構想である。廃屋となった洋館に置き去りにされた椅子。それは永遠の昨日を生き、永遠の明日を待ち続けていた。そして、時間と空間の座標が一瞬の交点を持った時、それは主人公の直樹の前に姿を現したのだった。物語を成功に導いたもう一つの要因は、末尾のいつ子の手紙だろう。これですべてが明らかになるとともに、物語はすべての円環を閉じ、じんわりとした感動と余韻が残る。
2015/02/26
はる
絵が怖くて今まで手に取るのを躊躇していたが、読んで良かった。もっと重い反戦小説だと思っていたが(もちろんその要素も多分にあるのだが)、むしろ主人公の少年の謎解きファンタジーとして、とても良質の児童文学だと思う。夏休みに古い城下町に住む祖父母の家にやって来た男の子。そこである日、ひとりでに動く古い椅子に出会う……。反戦を描きつつも物語として良く出来ていて引き込まれた。ラストも良かった。ただ、やはり挿絵が怖すぎる…。
2023/07/15
なる
仕事に向かう母に連れられて祖父母のいる花浦の町へ預けられにきた幼い兄妹。そこで小学生の兄・直樹は、誰もいないのに自在に動き回る謎の椅子と遭遇する。椅子の後を追って森の中にある古い民家を訪れると、「イナイ、イナイ、ドコニモイナイ」と椅子が「イーダ」を探していることがわかる。やがて妹・ゆう子が重要な鍵を握っていることがわかり……と、謎解きの様相をしめす前半から、話は次第にシリアスな展開へ。カレンダーに記された未来の暦。七つの川へ流されて行く光の籠。正体不明の女性りつ子。主題を巧みに隠しながら練られた名作。
2022/04/20
キラ@道北民
読友さんに頂いた本。表紙絵が怖いと子供に言われながら読んでましたが、子供に読ませたい本でした。ファンタジーを絡めてですが、戦争と原爆投下の話をありのままとても分かりやすく描かれた良書です。悲惨な戦争、戦後何年も残る爪痕、そしてそれを乗り越えて生きていく人々の力。現在の三密を避けた窮屈な毎日にも通じるところがあり、昨日の事のように忘れてはならない、自然と語り継がれていく出来事だと思いました。
2020/05/29
paf ❤︎
再々々…読。何度読んでも。これからも。戦争の直接的な描写なく、起承転結のくっきりしたミステリー色の強いファンタジー。児童書の形をとってはいるが、戦争小説を好まない大人にこそ薦めたい。/8月が来るとテレビ放映される〇タルの墓は、ファンの方には失礼だけれど、私はもう見るのがイヤ。予告CMすら映像の暴力だと感じる…。でも、テレビや映画等のわかり易い媒体で、若い世代に戦争を伝えることは必須。こちらは、随分昔に映像化されるもDVDにはなっていない。是非ともどこかにアニメ化をして欲しい。あの椅子が動くところを見たい。
2019/07/15
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