写真美術館へようこそ (講談社現代新書 1287)
写真美術館へようこそ (講談社現代新書 1287) / 感想・レビュー
翔亀
きのこ愛好家としても著名な写真評論家による、写真を「見る」ための入門書。写真創成期からの写真史のポイントを要領よく押さえながら、写真史に残る代表的写真家たちの実際の作品を見せながら解説していく。一方で、医学写真やヌード或いは「侍とピラミッド」(1864年)や「月面記念写真」など著者ならではの選択もあって、飽きさせない。客観的に「写しとる」ことと、主観的に「写すこと」の相克の歴史である写真というものの魅力と難しさを、数々の写真そのもののに語らせており、まさに<飯沢写真美術館>を楽しく訪問した気分だ。
2015/01/12
501
写真が生まれてから人が写真という媒体を通して何を表現してきたのか、各章のテーマにそって写真家の作品や時代を象徴する写真を紹介。紹介している写真の点数が多いだけに、ひとつひとつの解説は短いが、写真家の人物像、時代背景の深堀がすごく、写真の多種多様性、奥深さが知れる内容になっている。
2015/05/21
ほじゅどー
★★★古今東西の名作写真を集めた紙の上の美術館には5つの部屋がある。第1室は発明、第2室は肖像、第3室は風景、第4室は出来事、第5室は色彩。写真は「選択の芸術」。写真には写真家の無意識が映り込む。カルティエ・ブレッソンは決定的瞬間は何かという問いに「内面と外面の世界が互いに交流し一体となる時」と答えており、混沌が調和のバランスをとる瞬間を見出している。
2016/10/22
陰翳rising sun
写真の始まりから現代のカメラまでを網羅的に解説している。数百年の歴史がギュッと凝縮されていて、どの章も発見と驚きに溢れている。この本に載せられた写真はほんの一握りに過ぎないと書かれているが、それでも写真の持つ力を体感できた。まだ知らぬ名写真家の作品に触れられたことに感謝したい。出版が約25年前なので、デジタルカメラやスマートフォンについて言及されていない。スマートフォンで誰もが簡単に写真を撮れる「一億総写真家時代」だからこそ、写真の本質を探したい。答えがないことが答えとは、芸術はつくづく奥が深い…。
2021/02/16
sabosashi
わたしたちは世界を読み解かなければならない。 より正しくは、世界は読み解かれることを待っている。 ちょうど、詩のことばが、はじめはものそのものを表そうと格闘したすえに、ついにはものとことばとの繋がりはただの約束事でしかなく、ならば約束事なんていうものは、破られるためにあるのだとさえ思ってしまうような具合が、写真のうえにも言えてしまうらしい。 写真に撮るものと、撮られたものは、どこがおなじで、どこが異なっているのか。
2017/03/25
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