<子ども>のための哲学 講談社現代新書―ジュネス (講談社現代新書 1301)
<子ども>のための哲学 講談社現代新書―ジュネス (講談社現代新書 1301) / 感想・レビュー
へくとぱすかる
自分という存在の不思議、なぜ悪いことをしてはいけないのか、という二つのテーマをめぐる議論。ありがちな引用や難解な用語のない哲学書。「結論」を何かの役に立てよう、という読み方は本書の意図に反するが、途中の議論のおもしろさに興じるのが、まだマシな読み方なのかもしれない。他の人間が問題の意味を理解できるのが一種のミスであるような問題だが、ミスを承知で問題を理解・共感しなければ、そもそも読書も始まらない。この厄介さは言葉の問題なのか、世界のあり方に問題があるのか。ただ私は本書のテーマは自身の問題のように惹かれる。
2020/12/30
夜間飛行
小さいころ蠅人間の映画を見て、たとえ蠅と混じり合わなくても情報を転送して合成された自分は自分とはいえないと思った。もし科学が進んで私についての全情報を未来の世界に送り、素粒子レベルで再現することに成功して記憶や癖さえ私と同じ人を作ったとしても、それは〈私〉じゃないと確信を持って言える。つまり情報として〈私〉を伝えるのは不可能で、むしろ私が為す日々の小さなことに私の同一性があり、それは他者を鏡として拡散していく。自分にしか解らない〈私〉を言葉で掬うことはできず、その「語り得なさ」を語ることさえ不可能なのだ。
2017/06/03
ももたろう
哲学の入門書として、とても参考になる良書。哲学するとは、本当にシンプルで簡単なことだと分かった。つまり〈自分の抱く疑問の数々を、自分自身が本当に納得いくまで、けっして手放さないこと。これだけである〉ということに尽きると思った。だから〈勉強は哲学の大敵〉なのも非常に納得。その意味では〈読書も哲学の大敵〉と言える。「それぞれの人に考え抜いてみたい問題があるかどうか、これに尽きる」ここが、出発点だろうな。それはどんなものでも良い。「自分が考え抜きたい」と思うこと、それこそ哲学が喜びになるスタート地点なんだろう。
2016/10/20
ころこ
本書は問題が2つある。〈私〉に関する問題と、道徳に関する問題だ。いつも前半に注目が当たるが、今回は後半に力点を置いて通読した。道徳の問題はニーチェ関連本2冊と倫理に関する本1冊が出版されたが、著者のその後の展開が無いまま随分経つ。要旨は『四ぼくが感じていた問題のほんとうの意味』に集約されていて、今回読んでも本書の書き方ではピンと来るものがなかった。道徳内の善悪と道徳外の好嫌の違いが問題になっているのだが、今や多様な欲望が語られることによってこの問題は問題とならなくなったのではないか、と感じる。
2024/01/09
抹茶モナカ
永井先生が子どもの頃に立てた問いを考え抜く過程を本書を読む事で追体験して、哲学する方法を学べる本。わかりやすい西洋哲学史ではなく、考える事が哲学である事が学べる本。深く考える事が苦手な身としては、眩しいところもありつつ、普通の人なら考えないような点に問題意識を持つのは難儀だな、とも思った。哲学的センスが欲しくて読んだ。
2016/07/05
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