「おたく」の精神史 一九八〇年代論
「おたく」の精神史 一九八〇年代論 / 感想・レビュー
harass
2004年の分厚い新書。学生時代からのエロ本業界の編集を続け、徳間や角川の漫画編集の仕事を続けてきた著者が振り返る80年代論。その後の90年代も。同時代の自分には馴染みのある人物や事件や作品などが頻出して、それらの考察や著者の体験などを語っていく。回想録と評論が混じったようなスタイル。この著者のこれまでの著作の総ざらいのようだ。著者の事実婚の相手が漫画家白倉由美といまさら知って驚く。当時を知る資料であり、一つの解釈であり、良書。
2018/09/01
ホークス
おたく関係論者の著者による「自意識をめぐる戦後史の総括」。小難しいが面白かった。1980年代のキーワードは性→①フェミニズムが表現の世界に決定的な影響を与え、②本来脆弱な男性性は女性の自意識解放を受け、生身の女性から記号化された性に逃走し、③女性も「男性による女(身体)と少女(心)の分断という干渉」を排除できず自意識に手を焼く。…その他自身の文筆史を背景に、ヤバい事件やアニメ等の作品を考察する。日々食うのに精一杯でなければ、誰しも自意識に囚われるだろう。拗らせない様に付き合っていくしかないかもしれない。
2016/07/21
佐島楓
「消費される物語」および「男女間のディスコミュニケーション」が鍵か。それにしても、非常に混沌とした時代を生きてきたのだな、と我ながら思った。私としては80年代に起こった一番の衝撃は、手塚治虫が亡くなったことだったのだが。
2012/10/11
踊る猫
むろん著者の意に反する読み方だと思うのだが、本書は小説として読めると思う。大塚英志自身を主人公として。あるいは宮崎勤や「ニューアカ」に集った人、漫画家やオウム真理教の人物たちが群雄割拠(?)する本として。例えば小林信彦や金井美恵子の風俗小説と本書は意外と近いところにあるのではあるまいか。そして、小説の醍醐味のひとつはキャラクターが成長し変容するところにあると思う。大塚自身一編集者から今や論壇でかなりの名を馳せる批評家。その成長と変容(ひと口で言えば成熟)を味わうことができる。意外と侮れない一冊だと思われる
2021/05/12
ヤギ郎
筆者の視点や経験したことを中心に80年代からゼロ年代(のちょっと手前)まで語っている一冊。生まれる前のオタクカルチャー・サブカルチャーについて知ることができて,勉強になった。著者視点が強いので学術的な価値について要検討。単に筆者の関わりがあるからか,エロ本についていろいろ書いてある印象。
2018/08/27
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