日本人とは何か (講談社学術文庫 51)
日本人とは何か (講談社学術文庫 51) / 感想・レビュー
hit4papa
知の巨人と称される加藤周一による日本人論です。60年程前の8つの論考で、現在でも読み継がれていることから名著なのでしょう。文章がまどろっこしく、あれ?と思うところで断定的だったり、はっきりして欲しいところで結論が曖昧だったりと翻弄されてしまいました。「日本という試験管のなかでおこっている文化的現象の意味は、内側からみればまことにしかるべきものであっても、外側からみればわかりにくいことが多い」等、反感も含めてハッとなる部分はあるのですが...。現在の知識人の著書は、文章がすっきり読みやすいと気づきます。
2021/11/27
松本直哉
高見順と永井荷風の終戦の日記を読み比べながら、分析的方法的思考のない詠嘆的な日本の知識人の思考様式では軍国主義への抵抗にはなりえなかったと論証していくくだりを興味深く読んだ。宗教も天皇制も民主主義もこの国では血肉化されない皮相的なものでしかない。だから敗戦後天皇の位置づけが変っても、ああそんなものかと平然と受け入れることができたのだろう。フランス文学を深く学んだ人らしく、普遍的な尺度で日本を見つめようとする姿勢がきわだつが、普遍化されえない翻訳不可能の部分こそが日本を日本たらしめているのかなとも思う。
2015/02/02
nobody
「?」書込195箇所。自分で風呂敷を広げておきながら、自分で梯子を外す。マッチポンプ。「『七月十四日』のフランス」も「神ながらの道」も何やらキー扱いしている「荷風の問題」も説明なし。矛盾に破綻。こんな衒学という玉葱の皮みたいな書物を一級品扱いするんだから、そりゃ本も売れなくなる(「日本人とは何か――さしあたって何であるかわからぬ」と潔く自白しているがこれを帯にしてはいかが)。知識人における思想と実生活の乖離をピント外れに追究しているが、河上肇や野呂栄太郎と比した我が身を鏡に映して考えてみたら一発だろうに。
2020/07/22
ちえ
「西洋化ではなく、日本の社会そのものの中から生み出された民主主義意識の萌芽が問題である。その萌芽を発見し、育てて行くほかに、西洋化とそれに対する反動の繰り返されて来た明治以来の悪循環をたち截る道はないだろうから。」60年も前に指摘されていることなのに、日本の内発的な民主主義はまだまだだ。それどころか逆走しはじめている。著者の最近の著書も読みたいと思った。
2016/12/31
masabi
戦前は天皇は天皇の役を演じ、臣民は臣民の役を演じることで国民にとって実体のなかった天皇に対しても強烈な忠誠を持つに至った。天皇が戦争を終結させたという議論は開戦も勅命により行われたこと、終始実権がなかったことを踏まえなければならない。日本の知識人は特定の階層に集中し、行動するわけでなく広く散在している。そのなかでもまとまっている学生は総合雑誌によるところが大きいが知識欲に加え一種のコミュニケーションツールでもあった。ところが歳を取ると総合雑誌の購読を止めてしまい週刊誌に移ってしまう。したがって知識人の年齢
2014/07/09
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