食物と心臓 (講談社学術文庫 165)
食物と心臓 (講談社学術文庫 165) / 感想・レビュー
てれまこし
昭和15年は日中戦争開始に伴う食料難の時代でもあった。食物という日常的なものが問題化されたことを奇貨として、栄養補給という以上の食べ物の意味を考えさせるという意図があったのでは。三角は心臓の形という仮説が有名だが、今日においては、餅が私有財産の最初の形であり、日本土着の個人主義の萌芽であるという議論や、食物共有の思想などが興味深い。質素倹約を奨励する国策に迎合するような面も皆無ではないが、土着の民主主義の発展の歴史を食物文化を通じて明らかにし、時局を批判する姿勢と読めなくもない。
2017/08/25
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