私の個人主義 (講談社学術文庫 271)
私の個人主義 (講談社学術文庫 271) / 感想・レビュー
ehirano1
答えを探すのは他人本位、自分で答えを創るのが自分本位、というのが印象に残りました。漱石自身は、後者を優先することで苦境を脱したとのこと。一方で、漱石の言う自分本位には他者尊重(他者の本位を尊重すること)も含まれているので、決してエゴイズムではないとのこと。
2023/12/28
ケイ
「無知の知」という言葉を改めて考えた。イギリス留学は、確実に漱石の寿命を縮めた。十分に学ぶには、時間もお金も全く足らず、自分が現在持っている知識では留学をいかせ得ないと思っていただろう。漱石より相対的にできる人はそうはいなくても、彼は絶対的にはまだまだであると、その賢さゆえに悟っていたために、留学で得られるものの少なさに自ら気付いていた。しかし、彼は他者から見れば十分に学んできたのである。ここに、それが見てとれる。彼の思慮深さ、知識の広さ、ユーモア、思いやり…、どれをとっても一流だ。
2015/03/03
ケイ
漱石忌に。読むたびに味わいが違う。というか、どの講演の内容についても、記憶していた内容と再読している内容に少なからぬ乖離があるように感じ、読み進めているうちに記憶よりもっと立派な事を漱石が言おうとしていたのに気付くという繰り返し。核心さえうまくつかめていなかったようだ。漱石先生、ごめんなさい。さて、私自身が落語を聴くようになって6年ほど。落語を引き合いに出す漱石の例えにも感心する。当時の学習院の学生に「目黒のさんま」をもってくるなど絶妙ではないか。そして、他人の批判を容易くしてはならないと猛省した。
2018/12/09
のっち♬
渡英で目覚めた自己本位の信念を元に、個性発展のすすめを新時代の坊ちゃん達へ提唱。他者の自由を侵害しない限りで"自分の鶴嘴で掘り当てる所まで進め"—それを妨げる金力・権力をめぐる倫理問題は『道楽と職業』で言及される職業の分業・専門化にも通じる。著者は「相互の知識の欠乏と同情の希薄」の救済を社交や読書に見ており、余裕が乏しい時流だからこそ日常性に訴えた。個人から国家まで内発性と外発性に着眼した利己でも借り物でもない自己本位は彼の強さの根源。物質と精神、社会と個の相剋が進む時代に漱石が大成したのは偶然ではない。
2023/03/26
優希
漱石の思想が語られていました。個人主義とは利己的になることではなく、義務を果たすべきであると説いています。自己の個性を成長させる為には他人をも尊重すること、金銭には自己責任を持つことなど、現代にも通じる考えだと思いました。実際に学習院大学で行われた講演であり、啓発と自覚を促しています。今の時代も個人主義を貫くために必要で当たり前のことが欠けているような気がしました。
2015/10/25
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