日本の狂気誌 (講談社学術文庫 1338)
日本の狂気誌 (講談社学術文庫 1338) / 感想・レビュー
Tomoichi
もうお亡くなりなったが存命中はテレビでも活躍された精神科医の小田晋の書。彼の著作は過去にも読んだことがあるが本書はその中でも出色で面白い。古事記などの文献から日本に置ける「狂気」のとらわれ方の変遷をアナライズする。他にも上田秋成や平賀源内などにも言及しており彼らについても興味をそそられた。本書以外にも「狂気」について書かれているようなので読んでみたい。
2019/12/27
中年サラリーマン
視点が驚異。精神医学の観点から日本の古典文献を読み込み日本の狂気を分析していく良書。すばらしいの一言につきる。
2014/01/19
筑紫の國造
簡単に言えば、「日本の歴史で狂気はいかに認識されてきたか」を解き明かす異色の「日本論」。歴史学者とは違った視点から歴史を読み解いており、かなり面白い。「ハレ」と「ケ」と言う民俗学の言葉から、日本人がどのように「狂気」を見てきたかが明らかにされていく。西洋と違って日本では「社会に適合できない人々」を受け入れる場所が用意されており、差別的な扱いを受けつつも、時には「神聖なもの」として認識もされてきた。皮肉なのは、西洋医学の流入と共に「狂気」から神聖さがはぎ取られ、却って居場所がなくなってしまったことだろう。
2020/04/11
gtn
江戸時代の判例集「百箇条調書」には、精神障害者や酩酊者、少年による犯罪の処遇も記されている。乱心や少年犯罪には温情的な判決が多く、現在の心情に非常に近い。また、乱心と言えども酒による酩酊状態の犯罪は、自己責任の観点からか、やや罪状が重く、これも理に適っている。欧米ではまだ精神障害が悪魔の所為と思われていた時代に、疾病と見なし、理性的かつ寛大な判断がなされていたことが日本人としてうれしい。
2019/01/08
:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
名もない市民から高僧医者文化人…人の精神活動は大きく変わらなくても社会が変わることでずいぶんと扱いが変わるもんだ。 精神病は神様の仕業だったのに、脳や遺伝子の病気と位置づけられてから個人の問題に格下げされ、排除隔離される存在となり今に至る。社会での居場所がなくなり窮屈になっていく課程が切ない。 明恵上人、一茶、平賀源内の別の一側面を知ったので、今までとまた違った心持ちで彼らの作品に触れてみよう。
2020/02/15
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