龍樹 (講談社学術文庫 1548)
龍樹 (講談社学術文庫 1548) / 感想・レビュー
ホシ
髪は伸びては抜けを繰り返し、その姿を留める事がありません(諸行無常)。その刹那に我々は「フサフサ」だの「ハゲ」だのと社会的認識の枠を当て嵌めて頭を捉えようとしますが、「フサフサ」「ハゲ」という実体があるわけではありません(諸法無我)。そんな「フサフサ」「ハゲ」に振り回される我々は凡夫の極みです(一切皆苦)。実体の無いものに振り回されず、波平さんのような境地を我々は目指すべきなのです(涅槃寂静)。この四つを四宝印と言い、仏教の基本教理ですが、龍樹(ナーガールジュナ)は「諸法無我」の理論を大成しました。
2019/01/29
逆丸カツハ
ちょっとした公園で小川のせせらぎを聞きながら読んでいた。「中論」の本質を一言で表すなら、きっとそれは「時間は存在しない」ということだろうと思いついた。そのとき、自分はなんて美しい世界に住んでいるのだろうと思った。これが正しいのか、カルロ・ロヴェッリが正しいかどうかは自分にはわからないけれども。それとともにこの美しい世界で満たされることのない人々がいることに悲しくなった。
2024/03/04
加納恭史
親鸞さんが最初に着目したのが龍樹(ナーガルジュナ)でした。龍樹は我が国では「八宗の祖師」と仰ぐ。彼は原始仏教に説かれた「般若経」を更に発展させた。「般若心経」はその要約だが、そこから大乗仏教のメインテーマ「空」の哲学を展開する。彼の代表作は「中論」であるが最も深い哲学で難解と言われる。何と西洋人にも読まれていた。ヤスパースの「仏陀と龍樹」(ヤスパース選集5)にも取り上げられた。龍樹は大乗仏教の利他行を強調した。小乗仏教は利己的・独善的として軽視した。すべての衆生をすべての苦から救済する菩薩を称賛した。
2023/12/21
yutaro13
仏教に興味を持ったなら龍樹は避けられないだろう。本書は碩学・中村元氏による龍樹の思想解説と『中論』全訳。『中論』の詭弁的論理はプラサンガ=帰謬論法であり、その攻撃対象は説一切有部の「法有」思想。法有を斥ける目的は、小乗が説く縁起(時間的生起関係)に対して独自の縁起(相依相関関係)を説くこと。そして中観派の論説を読み解くと見えてくるのは、縁起=空=無自性=中道という関係。別の本で読んだ空を空じたのが中道という解釈は誤りらしい。龍樹の論理も完璧ではなく、著者もある部分で「言葉の魔術」と表現しているのが面白い。
2019/03/14
karatte
再読。ナーガールジュナの思想に関して要点を押さえたいならこれ一冊で充分なのでは。特に「空」「無自性」「縁起」の発生史的変遷と論理的基礎づけが逆転している理由の説明には大いなる知的興奮を覚えた。あと、バーヴァヴィヴェーカとチャンドラキールティが異なる派閥に属していたことも再読でようやく判った。やっぱり二回くらいは読まないと知識として定着しないんだな……。
2019/01/26
感想・レビューをもっと見る