笑い陰陽師 (KODANSHA NOVELS SPECIAL ヤK- 9 山田風太郎)
笑い陰陽師 (KODANSHA NOVELS SPECIAL ヤK- 9 山田風太郎) / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
久々に忍法帖を読む。本書は山田風太郎自ら「A級」と自賛する小説。連作下ネタコメディなのだが、これをA級に推す事が著者の思想を顕していると思う。主人公は著者の分身の様な占い師・果心堂(甲賀出身)と美人妻のお狛(伊賀出身)。全5話全て性と人生の相関関係を考察する様な、悲哀をたたえた喜劇である。果心堂とお狛の意見の相違は、まさしく男女の違いそのものである。思わず笑う小説なのに時々考えさせられ、あれほど楽しかったのにラストは何だか切ない。エロは日常の悲喜劇を起こす、だがそれを吹っ飛ばす一大事は憎むべし。
2014/10/09
ヨーイチ
別な意味で山田風太郎の代表作。何と言っても作者自らA級と言っているのだから。でもあまり売れなかったらしい。因みに「A」と言っている所は歴史を感じさせる。よくもまあ、これだけメチャクチャな小説が有った物だ。山田センセイは忍法帖シリーズを「全く意味の無い物を書きたかった」と評している。物書きでこんな暴言を吐くとは、いや正直と言うべきか。「笑い陰陽師」は可笑しさでは多分一番だと思う。余韻とか感動とは一切ない!山田センセイは書きながらドンドン変わっていくタイプの物書きだ。続く
2014/05/08
二笑亭
大道易者となった元忍者の夫婦、果心堂とお狛の元へ様々な客が。それまでの忍法帖をフリにしたセルフパロディというのか、下ネタオンパレードの連作短編集。ただ雰囲気自体は不思議と上品。忍法独筋具(どっきんぐ)やら空羅(くうら)やら忍法のネーミングからしてこれまで以上に人を喰っている。闘争心を失った人物が憲法9条を諳んじたり、松本張亭(松本清張のもじり)なる人物が出てきたりクスリとさせられる。
2024/02/12
てら
ボーッとしているが変な特殊能力を持っているダンナと、しっかり者の奥さんというコンビでもう勝ったも同然でしょう。風太郎のシモネタは「バカバカしさ」が「エロス」をはるかに上回っているのがたまらない。
c
「信玄忍法帖」や「忍者月影抄」は2000年代になっても文庫版が出て、最近でも復刊(というかカバーを変えただけの重版)されている。しかし「信玄」「月影」同様、作者自身が認定するAクラスの忍法帖であり、しかも最高傑作とまで宣う「笑い陰陽師」は、この講談社ノベルス版が出た切り、紙では出版されていない。最近「信玄」を読み返したところなので、こっちも久し振りに読み返してみたが。再読してもやはり印象は変わらず、せいぜいBクラスという印象。これと「伊賀忍法帖」を落として、代わりに「忍法八犬伝」「風来忍法帖」が入るべき。
2021/05/23
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