魍魎の匣 (講談社ノベルス キF- 2)
魍魎の匣 (講談社ノベルス キF- 2) / 感想・レビュー
勇波
ノベルス版にて再読。まず鳥口君の理解力と青木刑事の行動力には脱帽です。この二人なくしては物語が進まなかったのでは?と思ってしまうのです。関口君はじめ一味の皆さん邪魔ばっかし話を混乱させる(笑)。そして中禅寺がついに腰を上げる時、姑獲鳥での「山から鬼が降りてきたぜ」(木場)と今作の「京極、動くのか?」(榎木津)のセリフにはいつ読んでも鳥肌が立ちます。最後に邪魔ばかりしてた感のある関口先生、本の出版を京極堂に喜んで貰えてよかったね★
2015/04/16
sk4
「男が大事さうに膝に乗せてゐる匣の中には綺麗な娘がぴつたり入つてゐた」 ──二人の家出少女のうちの一人がホームから線路に転落して命を取りとめる、という事故から端を発した壮大過ぎるミステリー。比べるのはあまり好きではないのですが、私が今まで読んだミステリ作品の中では最強かもしれない。 これを読む前に『姑獲鳥の夏』を読んで、登場人物のキャラクターをしっかり把握してたので、面白さ倍増でした。 ──匣の娘もにつこり笑つて「ほう、」と云つた。ああ、生きてゐる。なんだか酷く男が羨ましくなつてしまつた。
2013/11/22
藤月はな(灯れ松明の火)
再読。きっかけは『呪術廻戦』の伏黒君がある式神を呼び出す文言が「布留部 由良 由良」と知った時、真っ先に思ったのが「魍魎の匣だ!」だったから。今、読むと違った視点で読めて新鮮でした。特に可奈子誘拐事件が起こるまで約半分の頁を費やしているのですが、私は1/3で描き切れていたと勘違いしてました。恐らく、後半の怒涛の解答へ至るまでの道筋の方が濃密に感じてしまったからでしょう。そして探偵役がいるミステリー自身からの読者への解答が色濃い。例えば、終盤辺りに木場さんが京極堂への糾弾は読者が探偵役に感じる苛立ちと重なる
2021/08/05
優希
ノベルズで再読です。とにかく匣、箱、筥で満たされた1作になっています。前世と今世を共にする少女。バラバラ殺人。『匣の中の娘』を完成させるための手段が美しく詰まっているように思いました。物語が進むにつれ、見えるのは細かな欲望と言ってもいいでしょう。我が娘がどのような姿になっても生きてさえいればという想いと医療の極みが全て凝縮され、殺人をも導いている流れは、どこに行き着くのかという問いを見せつけてくるようでした。男が羨ましくなるようなラストは果たして幸せだったのか考えさせられます。
2018/07/03
めしいらず
再読にも関わらず二段組700頁近い長大な物語を、息つく暇なく一気に読ませるこの桁外れの面白さは何だ。同時多発的に起こる別々の事件、それぞれのパーツが嵌るべき場所に嵌り、1つのパズルが完成するようなこの爽快さはどうだ。拡げた大風呂敷を一度に回収してしまうこの剛腕ぶりは何事だ。冒頭とラストが効果的に結び付く語り口のうまさ。不気味で蠱惑的な作中作の世界観が、物語全体に不穏な空気を纏わせる。衒学趣味溢れる京極堂の長広舌や登場人物たちのモノローグも、ちゃんと物語の一部に昇華されている。何と神懸かった傑作だろう。
2017/05/06
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