花嫁のさけび (講談社文庫 あ 22-1)
花嫁のさけび (講談社文庫 あ 22-1) / 感想・レビュー
トトリベ
「亜愛一郎の狼狽」では逆説とユーモアで読者を楽しませてくれたが、本作では技巧でも雰囲気でも違った面を見せてくれる。密室だの毒杯ゲームだの本格ミステリのコードが多数出てくるが、見るべきところはロジックではなく、「レベッカ」の本歌取りをした物語だろう。亡き前妻の影に悩まされる人気俳優の花嫁。このシンデレラ・ストーリーの終着点で意外な真相が明かされるのだが、それに導くための全体の構造、ミスディレクションの鮮やかさには舌を巻くばかり。論理とはまた違ったミステリの愉しさを教えてくれる作品だった。
2015/03/19
73番目の密室
序盤から某有名古典サスペンスを想起させる展開だが、それを想起した時点で読者は既に著者の術中にある。ミステリ的には然程目新しい要素もなく古典のお約束の集合体…のはずなのだが、構成と筆運びの妙で陳腐な印象は微塵もなく最後まで気持ちよく幻惑された。マジックで使い古されたネタでもルーティンの工夫によって斬新なショーに変貌する、というあれと同じである。やはりこの人の本質はマジシャンなのだなあ、と再認識した。しかし解決編で披瀝される伏線の数々には多少の強引さを…感じるのは真相に到達できなかった人間の僻みだろうか?w
2015/05/17
マリ
解説を読んでやっと少しの違和感の原因に気付いた。でも小説を犠牲にしていることはなく貴緒のことをみんなが絶賛していたりするが実は人間らしいところがあるところなど面白く読めるし、ミステリとして堂々としていてこういうところが泡坂さんの素晴らしいところだと思った。
2012/11/09
お笑いループシュート
花嫁は叫び声をあげた。中盤までは、これと云った事件が起こらない。もし、読んでいて退屈だなと思ったとしたら、それは、作者の仕掛けた罠に引っかかってしまっている証拠なのだ。11枚のとらんぷやしあわせの書もそうであったが、何気ないストーリーの展開が伏線として使われている。古典的名作に似せているのも、その一つだ。花嫁である主人公が叫び声をあげた後に暴かれる真相に驚くことだろう。
2017/01/21
Jimmy
30年前に泡坂さんに初遭遇した作品。友達のお母さんが読んだ本ですごいオチ、と薦められたもののそのオチをしっかりと聞かされてから読んだので、すごく気に入った分だけすごく残念だった。以来、泡坂さんはすべて読むようにし、今では絶版の作品も数多い。「レベッカ」を本歌取りしているとみせかけて、ミステリ史上最高の問題作へのオマージュとなっている。
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