喜劇役者たち (講談社文庫 い 2-9)
喜劇役者たち (講談社文庫 い 2-9) / 感想・レビュー
churu
この本を買ったのは17歳の時。つまらなかった。現に「ちっとも面白くありません」と投書が来た話を作者自身がしゃあしゃあと書いてるくらいだ。ところが30年も寝かせて自分がいい歳こいてから読むと突然面白さがわかる。井上ひさしの笑いはブラックな悲哀に裏打ちされている。「狂人の仲間入りをしていった同志たちへの鎮魂歌」のほろ苦さに思わず笑みを浮かべてしまう歳にならないと本当の面白さがわからない。そういう本の典型だろう。作者お得意の辟易するような羅列もリアリティの裏地になっている。巻末の山田洋次の解説がまた味わい深い。
2021/10/21
東森久利斗
哀しいほどおかしい、おかしいほど哀しい。悲劇を喜劇に、涙を笑いに、笑わすことに命を賭け己の人生に泣く、喜劇役者の業と宿命。現代にも引き継がれる血で血を洗う熾烈な戦い。渥美清、谷幹一、長門勇、関敬六、佐山俊二、駆け出し時代のエピソードや十八番の芸、実体験をもとにしたブラックでユーモアとペーソスにあふれた私小説、同志たちへの鎮魂歌。浅草六区、浅草フランス座の黄金時代、熱気、活気、情熱、むせかえるようなムンムンとした雰囲気。
2024/08/25
しそゆかりうめこ
今の人はいいわねえ、今の人はかわいそうねえと同時に真逆のことを言われたこともあった。今の人じゃなくなると懐かしさに浸りそうな時もある。この本にある世界は知っている今でも昔でもなく輝いている。舞台袖に暮らしてみんなを励ましたり、渥美清さんと出会いたい。面白かった。
2024/08/01
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