夜中の薔薇 (講談社文庫 む 5-2)
夜中の薔薇 (講談社文庫 む 5-2) / 感想・レビュー
ミカママ
前回のレビューで「手元に残したい」と書いたが結局かなわず、巡り巡ってまた手元に来たので再読。今回、向田女史とわたしの共通点をみっけ。転勤族の娘だということ。あちらは三年置きだそうが、こちらは一年で引っ越し、なんてこともあったな。「木が育っていくさまを見届けることができない」なんとなく根っこを持てない様子、身に染みてわかる。彼女がお料理を手際よく作っていく描写にもまたまた惚れる。
2022/06/19
らむれ
はっとさせられる言葉がたくさん並んでいる、大切なエッセイ。着ること、話すこと、食べること、つまりは生きることに丁寧になろうと思える。特に食、素朴なのに美味しそうな描写が並んで、おなかがぐうと鳴る。華美な言葉は一切ないのにこうも魅力的な随筆集に仕上がるのは、向田さんの丁寧な暮らしぶりが背景にあるんだろうなぁ。過度な自己肯定や自己卑下がなく、素直に著者を尊敬しながら読める、安心して読めるエッセイって案外少ない。良い作品に出合いました。中途半端な反省よりも、自分をどう生かせるかを考える。私も手袋を探し続けよう
2015/11/16
優希
疲れた心を癒してくれるようなエッセイ。平凡な日々を大切にしていることが伝わって来るのが好きです。日々丁寧に過ごしたくなります。着ること、話すこと、食べること、全てが向田さんにとっては普通であり特別。軽快で胸に沁みる言葉の数々が美しい。行き詰まっているものがスッと無くなるような優しさがあります。格好良くて潔い人柄も感じられます。背筋が伸びるようでした。
2015/11/23
kinkin
短編小説「思い出トランプ」が一番好きだ。しかしこのようなエッセイも、素敵だ。彼女が書いた小説にしてもエッセイにしても、かび臭かったり、茶色いシミのようなものがついていないのはどうしてだろう。平成の今、昭和の事が書かれているにもかかわらず、ついこの間の事やほとんど見かけることのなくなった物、使われなくなった言葉にもまったく違和感なく読むことが出来る。 サラッとした文章には、いつもいい香りが漂ってくると感じるのは私だけだろうか。
2014/08/18
ユメ
初めて読む向田さんの随筆。些か緊張して挑んだら、最後の晩餐の献立に頭を悩ませるなど、意外にも親しみの湧く一面が見えてきて、肩の力が抜けたら文章がすとんと入ってきた。それでいて、やはり背筋が伸びるような一文が随所にある。「自分に似合う、自分を引き立てるセーターや口紅を選ぶように、ことばも選んでみたらどうだろう」他人の言葉を不格好につぎはぎしている自分を恥じた。ちょっとやそっとで身に着くものではないけれど、世界の内から外から、私だけの言葉を探していきたい。言葉に対しては生涯「手袋を探している」人でありたいな。
2015/05/31
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