花園の迷宮 (講談社文庫 や 27-1)
花園の迷宮 (講談社文庫 や 27-1) / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
望まぬ身売りも家族の為には当然のこととされた昭和初期。貧しい片田舎で育った二人の少女が横浜の遊郭に売られ、そこで不気味な連続不審死に巻き込まれていくサスペンスミステリ。謎の多さで推理ものとしての面白さを満たしながら、日増しに濃くなる戦争の影、不景気と貧困が蔓延する世相、そんな背景を遊郭という特殊な舞台に絡める事で、不穏当な時代の悲劇をより浮き彫りにする物語に仕上がっている。貧しさから抜け出したいという欲は決して悪ではない。結局のところ、全ての元凶は戦争ではないかと強く感じずにいられなかった。➡(続)
2019/09/20
ちょろこ
古き良きミステリ、の一冊。時は昭和七年、舞台は横浜の遊郭。その遊郭でおきた親友の突然の死。そこから始まる連続不審死事件。もしやこの遊郭に全てを繋ぐ秘密があるのか…。文句なしに面白かった。この時代が醸し出す雰囲気にとっぷり酔いしれ、最後の最後まであきることなく惹きつけられる展開だった。後半、パタパタと寸分の狂いもなく綺麗に折りたたまれながら全てが回収されていくような感覚は気持ち良かったな。これは古き良きミステリ、という言葉がしっくりくる。シンプルかつ驚きもある完成度の高いミステリ、久々の満足感。
2019/08/23
たか
第32回乱歩賞受賞作。 昭和7年、飢えと不景気のため、若狭から2人の少女が横浜の遊郭に売られて来た。しかし、娼妓として働き始めた美津は、客を刺殺し服毒自殺を図ってしまう。 娼妓としての年齢が足らず下働きをしていたふみは、美津の無実を晴らすべく一人捜査を行う。 次々と娼家を襲う殺人事件、人間の欲望の凄まじさ…。 ミステリとしての完成度やテンポの良さもさることながら、風俗や人物の描写が素晴らしい! 悲しい結末ではあるが、ラストのふみの決意が清々しい余韻を残す。 長い乱歩賞の歴史の中でも一番好きな作品だ。A評価
2019/08/10
瑪瑙(サードニックス)
若い頃読んだ本を無性に読み返したくなりひっぱり出してきました。話の流れや犯人をすっかり忘れていたのですが、読み進むうちにだんだんあらまし思いだしました。でも、今読んでみても決して色褪せない面白いお話でした。なんといっても主人公のふみが良いです。少々無鉄砲な所がありますが、しなやかな感性と鋭い観察力で真相に迫って行くところが良かったです。引き続き山崎さんの作品を読んでいこうと思います。
2016/02/24
ヨーコ・オクダ
貧しい実家の事情で横浜の娼家「福寿」に売られた美津とふみ。見目麗しい美津はすぐに娼妓としてデビュー。ふみは年齢が足らず下働きとしてスタート。愛欲、金銭欲渦巻く娼家ではトラブルが付き物。とうとう美津が客を刺殺し、自死。美津の犯行、死亡に疑問を感じたふみが真相を追及しようと動き出すと、死人が増えていき…。好奇心旺盛なふみの探偵っぷりは、結構大胆で面白い。男衆・荘介の協力もあって辿り着いた「福寿」の因縁。いくつかの謎が解け、心機一転…と見せかけつつの、もう一波乱。エンタメ性バッチリ!
2021/09/10
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