遠いアメリカ (講談社文庫 と 13-4)
遠いアメリカ (講談社文庫 と 13-4) / 感想・レビュー
遥かなる想い
第96回(昭和61年度下半期) 直木賞受賞。 アメリカという国が 夢に溢れた国に見えた時代。 ペイパーバックを辞書なしに 読めたら格好いいと 思った日々が確かにあった… そして、アメリカに憧れ、 アメリカでは○○してるという ことが先進的だと皆が 信じていた時代が確かに あった。本短編集は、重吉を 軸に、梢枝、父母等を通して、 そんな時代を今に伝えてくれる。 文中に出てくるアーウィンショーが なぜかお洒落である。
2014/01/03
hit4papa
漠然とした希望を抱きながら、何者にもなれないモラトリアム男の日々を描いた作品です。連作短編集で、タイトル作「遠いアメリカ」、「アル・カポネの父たち」、「おふくろとアップル・パイ」、「黄いろのサマー・ドレス」からなります。大学院を中退して、なお親の脛を齧り続ける翻訳家志望が主役。1950年代が舞台ですが、いつの時代もこういう情けない中途半端は輩はいたのです。時代の雰囲気だけは、興味を惹かれました。それだけと言われれば、それだけなのですが・・・。ラストは、その後が気になる不完全燃焼な清々しさです。【直木賞】
2020/05/04
詩 音像(utaotozo)
遅れたが、感想を改めて。初めて読んだのが単行本発刊当時、自分が学生の時。正しく何者にもなれないで読めもしないペーパーバックを買っていたあの頃ぐっと来た。ハンバーガーのくだりだけやたら覚えていて、第二部、第三部はほぼ忘れていた。作者の翻訳家としての名前だけは知っていたので、この人もやがては本物のプロになるのかとは思っていたのだが、早川書房の編集者であったこと等、今回初めて知ることになった。ハヤカワノヴェルズを殆ど独力で立ち上げたというのもビックリ!考えてみればこの人がいなければ自分の読書人生はなかったかも。
2019/10/19
高橋 橘苑
1986年直木賞授賞作。昭和30年代が舞台のこの作品は、常盤新平さんの自伝的小説であろう。各章のタイトル「遠いアメリカ」、「アルカポネの父たち」、「おふくろとアップル・パイ」、「黄色のサマードレス」この希望としがらみが交差する命名が実にいい。憂鬱なしがらみを振り捨てて、希望だけを見つめていたい、その視線の先に50年代のアメリカがあった。時代は随分遅れるが、自分も若い頃は、以心伝心よりもソフィスティケーティドという語感に遥かに魅力を感じていた。「黄色のサマードレス」、その響きだけで何か切なくなってしまう。
2015/10/25
rokubrain
昭和30年代、大学の英文科を出て大学院に進んだものの将来の方向性が見えずモラトリアムが続く青年の成長譚。 手探りでアメリカを思慕している。 そういう時代だったことが愛おしい。 高度成長期は日本の青春時代ともいえそう。 時折やってくる故郷の父や母、東京でできた唯一の話相手の恋人、翻訳世界の先輩たち。 それぞれの関係性で彼に対する心配や叱咤や応援のカタチが違うのが魅力的だ。4つの短編物語。 「遠いアメリカ」 「アル・カポネの父たち」 「おふくろとアップル・パイ」 「黄色のサマードレス」
2022/01/22
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