ハード・ラック・ウーマン (講談社文庫 く 2-19)
ハード・ラック・ウーマン (講談社文庫 く 2-19) / 感想・レビュー
zanta
私の年齢で、読書が趣味と標榜するなら、栗本薫を読んでないなんてありえない。のだが、実は初めて読んだ。もちろん中島梓名の本も含め。潜りの読書家だったわけだ。そして、既に世を去ってしばらく経つのに遅ればせながら洗礼を受けてしまった気がする。この本は昭和62年に出版されているが、殺人事件そのものが主眼ではなく、被害者も加害者も主体ではなく、その事実を前に、関わりのあった人の精神的な遍歴が主題になったんだ。現代とは立ち位置が違うんだと痛感する。もっと早く手にとるべきだった。しばらく嵌まってみようか。今さらながら。
2014/06/12
調“本”薬局問悶堂
“ぼくらシリーズ”の薫クンの親友、石森信が主人公なので、同じノリで読めると思っていた。 場面は夜で明かりといえばネオンや舞台照明のやたらと眩しい、でも束の間の光。当然薫クンはいない。 ぼくらシリーズで信は薫クンのお兄さんであり保護者のような、優しく暖かい人だ。 33歳の彼は全くロッカー。「ポーの一族」というバンドを組んでいたとは思えないし、薫クンが困っているときに走り回った姿はない。薫クンといない信はこういう人だったのか。人には親友にでも見せない顔がある。 《2020年5月 登録》
2005/11/14
やいとや
何度も読み返し過ぎて、ほぼ全文を記憶してしまっている為に、もう再び読む事は無いだろうが、どの本よりも近くにある本、というものがある。個人的にはそれが本書。ロックに対して憧憬と偏見(笑)で出来た内容は既に古く、今の目で読めば苦笑を禁じ得ない所だが、この作品は美しい。主人公石森信がある場所で口笛で吹く「ホテル・カリフォルニア」のギターソロは、確かに読んでいた高校生だった自分の耳に聴こえ、今も身体の裡にある。このような作品は作者もこれ一作しか書けなかったし、自分もこれ一作しか読めていない。その事を幸福に思う。
2017/10/03
犬
はたして何度目の読了だろう。栗本薫はほとんど読んできたが、大作を除くと、やはりこれと「怒りをこめて振り替えれ」が個人的ベスト1に輝く。こんなマイナーどころをなぜと言われると、何とも答えに窮する。世界観、そして石森信と波長が合ってしまったとしか言えないのだが。
2013/02/06
Akiko Kobayashi
読むたびに思うのは「○○を侮辱するな。ぼくが許さん!」という相手が自分にいるかどうか。私が誰かに言ってもらえるのではなく、私が誰かをそう思えているかどうか。しばし考え、そしていつもホッとする。
2018/05/20
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