市塵 上 (講談社文庫 ふ 2-8)
市塵 上 (講談社文庫 ふ 2-8) / 感想・レビュー
キムチ
主人公新井白石は正徳の治で知られ、かつ難解な自叙伝「折りたく柴の記」の著者でもある。時は綱吉亡き家綱の治、この後に吉宗の治世が始まる。ただでさえ冷や飯食いと言われた出自でありつつも甲府藩から間部と共に出仕した。幕府お抱え林一族や荻原重秀との対峙・・奸物!彼を囲む周囲とは心温まる材料はかけらもないような日々の中で常に政治の理想を追い求め、自らの内に刻苦を刻むような、まるで霜月の明け方のような時間。上巻末は想いを込め、見守っていた不肖の弟子の出奔する後ろ姿にともすれば自らの剛直な性を思う。やわな一部分と共に。
2014/06/23
剛腕伝説
徳川家宣を補佐し、政(まつりごと)に参画していく新井白石の物語。前半は読み辛く、藤沢作品で初めて挫折しそうになってしまった。誰それがいくら加増を受けたとか、綱吉の悪政の数々とかの羅列が多過ぎ、少々苦痛であった。但し、中盤以降は俄然面白くなってくる。新井白石の明晰さと家宣の名君ぶりが清々しい。 司馬遼太郎をして、日本の2大頭脳と言わしめた(もう一人は吉田松陰)新井白石には大変興味があった。密入国のイタリア人宣教師、【シドチ】への尋問場面に、白石の明晰さが顕著に表れている。面白い。下巻が楽しみ。
2020/02/12
umeko
お堅くて真面目すぎる白石の時折みせる感情が、妙にこの人を魅力的に感じさせられるところ。お堅い白石に不安を感じてるところに、間部が登場するとほっとする。下巻が楽しみ。
2018/11/01
月見草伝説
知らないお侍さんの名前ばかり並べられて、内容が頭にはいらなかった。
熱東風(あちこち)
少し前に荻原重秀に関する本を読んだので(村井淳志氏『勘定奉行 荻原重秀の生涯』)、その対比としての新井白石をもう一度見てみたくなって、大昔の本を再読。当然ながら荻原は悪者として描かれている。が、荻原の“功績”を知った後では、それを鵜呑みには出来ない。本作(『市塵』)自体、どこか淡々と出来事を述べるだけで、白石個人としての人物像が浮かべづらいという面があるが、荻原が登場する場面だけは感情(負の)がむき出しになっているのが妙に滑稽ではある。実際は頭は良いがやや狷介であったらしい。/下巻へ。
2017/03/25
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