市塵 下 (講談社文庫 ふ 2-9)
市塵 下 (講談社文庫 ふ 2-9) / 感想・レビュー
nakanaka
間部詮房と共に六代将軍・徳川家宣を支えた新井白石。家宣の死後、その子家継にも仕えるが早過ぎる死により志半ばで幕府中枢から外れることに。死ぬ思いで取り組んだ仕事が吉宗政権になった途端変えられてしまうという結果はあまりに残酷ではありますが、それが現実なんですかね。それでも白石の残した外交内政の業績は偉大であると感じました。またもう一人の主役である間部とは職を辞してから関係を疎遠にせざるを得なかったというのは残念です。様々なしがらみがあったのでしょうが、思い出話に花を咲かせてもらいたかったなぁ。
2022/03/04
AICHAN
図書館本。幕政に深く入り込んだ白石は、単なる儒者としてだけでなく、幕政にも関与するようになり、「天下有用の学」を志してどんどん新しい政策を建言していく。将軍は白石を重く用い、白石の立場は重いものになっていく。しかし、そこに嫉妬や反発が生まれ、讒言や攻撃が白石に対して行われる。白石は無視して信じる道を突き進む。しかし将軍が没し、やがて吉宗の時代になると白石は幕政から遠ざけられる。「市塵(しじん)」とは市中の賑わいのことで市井のことだろう。白石は市井の中から出て市井の中に戻り、多大な業績を後世に残した。
2017/11/15
shincha
他の藤沢周平さんの作品とは違う感じを受けた。もちろん、解説の伊集院静さんも言っているように藤沢さんの紡ぐ丁寧な言葉の中に場面のディーテイルと共に、そこにいる人の人とナリを彷彿とさせ、物語の根幹の布石にするような技も散りばめられている。歴史の授業でしか聞いた事がない新井白石の人としての生き様や、成してきたことを、吉村昭さんのような淡々とした事実を積み重ねことでよりリアリティが出ていると感じた。おこがましい言い方ぢが、藤沢周平さんの新たな作品を見た。まだまだ奥が深いな。藤沢周平。
2023/02/17
shincha
他の藤沢周平さんの作品とは違う感じを受けた。もちろん、解説の伊集院静さんも言っているように藤沢さんの紡ぐ丁寧な言葉の中に場面のディーテイルと共に、そこにいる人の人とナリを彷彿とさせ、物語の根幹の布石にするような技も散りばめられている。歴史の授業でしか聞いた事がない新井白石の人としての生き様や、成してきたことを、吉村昭さんのような淡々とした事実を積み重ねことでよりリアリティが出ていると感じた。おこがましい言い方ぢが、藤沢周平さんの新たな作品を見た。まだまだ奥が深いな。藤沢周平。
2023/02/17
キムチ
上下終え、白石の足跡を俯瞰した傲慢な言葉はでないが市塵に戻った・・の言葉が彼の成し遂げた生涯への想いを現わせているのではなかろうかと感じた。文庫巻末の伊集院氏解説が妙味。幾度も現れる林家や譜代一派との軋轢。時は変われども、現代にも通じる感覚かも・・地縁・血縁のしがらみ等。家宣の夭折、吉宗に変わり,下賜された家をおいもて払われる最後、間部のその後。白髪蒼顔を照らす燭台の灯を鬼気と、哀れと、穏やかとみるかは読者の主観。今日でも孤独死を本人納得の心境とみる節もあるから。最後、遭遇する伊能との場面は味がある。
2014/06/25
感想・レビューをもっと見る