今夜、すベてのバーで (講談社文庫)
今夜、すベてのバーで (講談社文庫) / 感想・レビュー
てち
依存というものは人間そのものである。何かに依存していない人間がいるのであれば、それは死者である。その依存の対象が、酒の人もいれば女遊びやSNSといった人もいる。本作は、依存の対象がお酒の男の物語。たしかに、依存の対象としてお酒は最適だ。たいしてお金もかかからず、なんせ一人でもできてしまう。しかし、アル中の先に待ち受ける未来は、、、 平均寿命の伸びなどにより昔より余暇が増えた昨今。あなたは何に依存する?
2021/01/01
ケイ
この人は苦しいだろう。心にいくつかあいた穴から心がこぼれだし、埋めようとそこから酒を注ぎ込んでも、ほかの穴から全部こぼれ出す。こぼれ出す時に、さらに心を抉っていく。バロウズと決定的に違うのは、あんなにいい人達が小説に登場することだ。こんな人達に助けて欲しかったのか。頭で考えて理屈をつけて調べて分かったような気になった男がまたアルコールに手を出す時に言う言葉は、すべて言い訳だ。屁理屈なんか聞いてやらないよ。最後は美談じゃないよね。もう1人を巻き込んだ悲劇的結末へのリスタート。さやかを巻き込まないで。
2018/11/28
ken_sakura
ほぼ下戸。面白かった。生きていれば良い(^。^)「なぜそんなに飲むのだ」「忘れるためさ」「なにを忘れたいのだ」「・・・。忘れたよ、そんなことは」(冒頭の古代エジプトの小話♪( ´▽`))アル中になる予感がしたのでアル中の文献を肴に呑んで幾年月、入院直前にワンカップを二本飲る模範的なアル中入院患者小島容と模範的な入院患者達の物語。ごく自然にどいつもこいつも普通に可笑しい(^。^)教養とは一人で時間を潰せる技術という見解にほーと思う(^。^)結局飲む訳で、無駄に内省的な感じがユーモラスだった。
2019/01/12
ゆいまある
酒が飲めない私はアル中の気持ちが分からない。本を読んで分かった気になれるとは思わないが、読まないよりはましだ。中島らもの実体験に基づく小説。灘高在学中から酒と薬物の乱用を始めたらもさん、物凄い勉強量。依存症の本はこれ一冊でOK。内容は暗い。真冬の海にひとりで溺れているような孤独と苦しさ。これが依存症の世界か。どれだけ酒が身体を蝕み、周囲を悲しませるか、繰り返し突きつけられる。中島らもは生涯飲み続け、52歳で酩酊した上死亡した。医師が病棟で働く描写に「ああ仕事したい」と喉が鳴ってしまった。私も仕事依存治そ。
2019/04/17
優希
吉川英治文学新人賞受賞作。一口含むと感じる独特の香りに酔わされる、それがアルコール。この作品はそんなアルコールにとりつかれた男の物語。アル中ならではの見る世界が幻覚なのにリアルでした。ユーモアも交えつつ語られる物語でありながら、どこか壮絶な雰囲気を醸し出しています。アルコールは飲めないけれど、飲み続けるとこんなになるのかと少しゾクッとさせられますね。とはいえ、惹きつけるものがあり、面白かったです。
2017/11/18
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