夢使い: レンタルチャイルドの新二都物語 (講談社文庫 し 33-2)
夢使い: レンタルチャイルドの新二都物語 (講談社文庫 し 33-2) / 感想・レビュー
佐島楓
感想が猛烈に難しい。ミステリでも、放浪小説でもなく、簡単にはカテゴライズを許してもらえない。主人公のマチューがとびきりチャーミングだが、著者のイメージはどちらかというと元小説家のクビタケに投影されているように感じられる。バブル期只中に書かれた作品だが、狂乱の時代をどうも嘘くさいと思っている醒めた視点から編み出される文章には時代性を感じる。不思議な世界へのトリップ。
2018/02/03
メタボン
☆☆☆★ スカスカで斜に構えた警句的な文体は相変わらず。しかしこの文体でこれだけの長さの作品を構築できるのはやはり島田雅彦の力量と言っても良い。なので最後まである意味緊張感が途切れずに読ませる作品となっている。解説がこの作品の本質を良くあぶり出している。舞子とマチューの関係性は予定調和的。このあとのマチューの物語を読んでみたかった。
2018/03/26
ネムル
島田作品に限らず、バブル期の文学的風化はいずれも甚だしいという印象を覚えつつ、とても良かった。移民・難民と亡命、バブル/ポストバブル、またはゲイレズエイズ、新たな時代への胎動をひしひしと予感させつつも、島田流の才気煥発な軽薄さで上滑りしていく様が素晴らしい。この真摯な空虚さからは、これはこれで学ぶものがある。「シ・ョ・ウ・ガ・イ。この理論を発明した人にクビタケは感謝しなければならない。/この世の一切の未知のものに対して、あらかじめ答えを与えることのできる唯一の理論だから。これは物理学大統一理論に匹敵する」
2018/01/27
San fairy Ann
日本生まれNY育ち、産みの母はあんまり知らない、育ての親と借りの親と血の繋がらないたくさんの兄弟たちの間で育ったバイセクシャル 人種、セックス、ジェンダー、国境をふわふわと越えていく夢使いマチューが織りなすバブル期の流離譚 シリアスになりそうなシーンもなんかひょうひょうと軽くて、いやそういう時代だったんだろうなーとか思った
2013/12/15
いのふみ
歪んでるけど、何か青春……。これを書いていた周辺の時期、スランプだったらしい。ちょうど現在新潮文庫に収められている短編集もそうなのだろうか(どうりで)。でも不思議と元気出てくる。
2017/09/22
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